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第6話

創平さんは私を連れてヨーロッパを巡ってくれた。

私が少しでも気に入って目を止めた服があれば、すぐに買ってくれた。

食べ物の広告写真をちょっと褒めると、次の食事にはそれを用意してくれた。

通りかかった白いスポーツカーに「かっこいい」と言ったら、その場で秘書に電話をかけて、販売員の説明動画を見せてくれて、「どのオプションと色がいい?」と聞いてきた。

その車の価格が1億を超えると知った私は、思わず息を飲んだ。

「これ、さすがに高すぎるわ!」

「大丈夫だよ」

「でも、免許を取ってから全然運転してないし……この車で出かけて、傷つけたり壊したりしたら、もったいないじゃない」

「運転について、改めて教えてもらえばいい。和美が好きならそれでいい。運転したくなければ、運転手を雇ってもいいしね」

創平は私が決めかねているのを見て、白色を選び、他のオプションもサッと決めてくれた。それから高級ブランドのバッグ店にも連れて行ってくれた。

あのバッグの値段を見ただけで、心臓が跳ね上がるようだった。

「もうこの歳だから、このバッグは勿体ないよ。もう行きましょう」

そう言って振り返ると、彼が私の手を引き止めた。

「和美は一生懸命に生きてきた。だからこそ、今の年齢になってもっと楽しむべきだよ。考えるべきなのは値段でも、自分にふさわしいかどうかでもない。外見や値段を超えて、自分が本当に好きかどうか、それだけを考えればいいんだ」

「和美が好きで、喜んでくれれば、それだけで価値があるんだよ。違うか?」

私は小さく頷き、少し緊張しながらも気に入ったバッグを二つ選んだ。

「本当にありがとう。このブランドのバッグ、何十年も前から欲しかったけど、結局我慢して買わなかったの」

創平は笑顔で私の手を取った。

「気に入ってくれてよかった。俺が毎日一生懸命に働いてた甲斐があった」

その後、食事や遊び、買い物も、私は値段を気にするのをやめ、ただ自分が好きかどうかだけを見るようになった。

「このステーキ、本当に美味しい!ありがとう。すごく幸せだわ!」

「このクルーズ船の最上階からの景色、やっぱり最高だね。一緒にここで写真を撮ろう」

「ドレスばかり選ぶんじゃなくて、このスーツもいい感じ。明日は一緒にこれを着よう」

最初は少し戸惑っていたけど、次第に自然体で楽しめるようになっていった
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