共有

第5話

兄妹二人は普段から自分に惜しみなくお金を使っている。

スマホは最新機種を、服はブランド品を着ていた。

今回は、私への謝罪として、賞味期限が近づいたヨーグルトを一箱買ってきた。

「母さん、まったくさ、新しい相手が加賀谷さんだなんて、どうして早く教えてくれなかったの?最初から言ってくれれば、こんな大騒ぎにならずに済んだのに」

静恵は愛想よく私の腕を取ろうとした。

だが、離婚を迫り再婚をけしかけたあの冷たい姿が忘れられず、私はそっとその手を避けた。

信之は私を一瞥して、「わざわざ謝りに来たんだ、いい加減許してくれよ」と言った。

堪えきれず、目を赤くして罵った。

「今まで私を追い詰めたくせに、今さら口先だけで済むと思ってるの?図々しいにもほどがある!」

今までずっと静恵と信之に冷たく扱われてきた。こんなふうに私が鼻先で怒鳴るなんて、初めてだ。

信之は短気で、たちまち怒りに燃えた。

「何様だよ?加賀谷さんとあんな早くに入籍したんだ、前からやましい関係だったんだろ。離婚させたから晴れて加賀谷夫人になれたんだろうが。僕たちに礼の一つでもしたらどうだ?」

図々しい人間には慣れていたが、ここまでのは初めてだった。

あまりの悔しさに目が眩み、兄妹をぐいと押し返して言った。

「出ていけ!」

信之は私以上に腹を立てている。

「こっちから願い下げだ!言っておくが、小松さんの会社と加賀谷グループの契約は続ける必要がある。加賀谷さんを説得できないなら、縁を切るぞ!」

そう言い残し、出ていった。

「母さん、この年で加賀谷家に嫁いでも、子供が味方してなきゃ、いざという時誰も助けてくれないんだよ。しっかり考えて。ガッカリさせないで」

静恵は私に失望したような目を向け、兄を追いかけて出て行った。

今まで子供たちのために犠牲を払い、どれだけ譲歩してきたことか。

二人は私の無条件の愛に甘えてきた。

絶縁をちらつかせれば、どんなことでも私にやらせられると思っている。

しかし、彼らは知らなかった。

私はもう彼らに心底失望しており、助ける気はなくなった。

夜の食事の時、創平が私が沈んでいるのに気づき、提案してくれた。

「しばらく旅行でもして、気分を変えようか?ど行きたい場所はある?」

「でも、仕事で忙しいよね」

行きたい気持ちはあったが、彼の仕事を邪魔するの
ロックされたチャプター
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status