第3話

創平は私の不安を理解して、無理に強いることはせず、「まずは俺の息子と娘に会ってみて、どうしても受け入れられなければ強制はしない」と言った。

彼の息子は加賀谷グループの社長・康成、娘は市立病院の院長・佐枝子だ。十年前に私が創平を助けたとき、二人ともわざわざ感謝に来てくれたことがあったが、その頃と今では状況が違う。

午後には二人と一緒に食事をすると聞いて、私は少し緊張していたが、彼らはとても気さくで、わざわざ私のためにプレゼントまで用意してくれた。

「母が私を産んで間もなく亡くなりました。父は後妻を迎えることで、私たち兄妹が嫌な思いをするのではないかと心配していました。だから最初は再婚する気がなかったんです。私たちが大人になってからもなかなか良い相手に巡り会えず、ここまで来てしまいました。でも今日、父が新しい相手を見つけたと聞いて、私たちも嬉しく思っています」

「菊地さん、退職金がないと聞きましたが、その点は心配しないでください。我が家でお金に困ることはまずありません。菊地さんと父が毎日楽しく過ごせることが一番です」

1か月の間、一緒に過ごすのは予想以上に気楽で楽しかった。

いよいよ正式に離婚する時が来た、私は隆志と離婚届を提出し、信之と静恵の催促と脅迫に応じて創平との再婚届も出した。

兄妹はミッションを達成したかのように、新しい継母に会うために急いで向かい、私には目もくれなかった。

隆志と亜沙美は長年の不倫関係をようやく合法化し、天下に発表するかのように盛大な結婚式を行い、わざわざ私にも招待状を送ってきた。

孫達が恋しく、あの家族には嫌悪感を抱きつつも、私は結婚式に出席した。

亜沙美は私を見るなり眉をひそめ、「よくここに座れるわね？」と嫌味を言った。

彼女の言葉はまるで金科玉条のように、信之と静恵が崇拝して従っていた。

静恵は私に文句を言いに来た。

「母さんも年配なんだから、もう少し気を利かせてくれてもいいんじゃない？今日は加賀谷グループの会長まで来てるのに、手ぶらでくるのはさすがにないでしょ。プレゼントもないの？」

私は内心で怒りを抑えつつ言った。

「私がお金を持っていないこと、あんたもわかっているでしょう？」

私のお金は彼女と信之に使い果たされ、家を出るときには4千円さえ持っていなかったのだから。

「お金がないなら借りればいいし、来なければいいのに。恥をかかせるつもり？」

信之は私の腕を掴んで強く引っ張った。

私は彼に引っ張られて腕が痛み、服のファスナーがテーブルクロスに引っかかってしまった。

「手を放して、自分で出て行くから」

ここまで恥をかかされるなら、私ももうこの場にいたくなかった。

しかし信之は焦って「居座るつもりか？」と言い、無理やり私を外に連れ出そうとした。

私は椅子の脚に引っかかって転んでしまった。

ガチャーンと音を立て、テーブルの料理が床に散らばり、大半が私の体にかかってきた。

私は熱さに息を呑み、痛みで立ち上がれないのに、信之と静恵はただ急かして早く出て行けと言うばかりだった。

亜沙美は怒り狂って近づき、私を平手打ちし、何度も蹴りつけた。

立ち上がろうとした私を、我が子たちが押さえつけた。

その瞬間、私は抵抗する気力さえ失い、ただ死にたいとさえ思った。

亜沙美は怒りに震えながら皿を手に取り、私の頭に投げつけた。

「菊地さん、加賀谷会長がもうすぐ来ることを知っていてこの騒ぎを起こしてるんでしょう？あんな大物、あんたみたいな老婆じゃ一生会えない人よ。わざわざ呼んでやったのに邪魔して、さっさとくたばれよ！」

私は頭を割られて血まみれになり、亜沙美はさらに私を蹴ろうとしたが、彼女の息子が駆け寄って叫んだ。

「母さん、加賀谷さんが来たよ！」