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第34話

向こう側の誠は、美穂を目の前にして、彼女に香織を知っていることを見せなかった。そして圭介に彼女が言ったそのままの言葉を伝えた。

圭介の表情は和らいだ。

美穂が自分から香織のために嘆願に来たことで、彼は少し驚いた。

「いいだろう」圭介は承諾した。

こんなにあっさりと承諾したのは美穂が理由ではなかった。

むしろ、彼は香織が外に出て、人前で顔を出し、露出度の高い服を着たり、仕事がないからと夜の仕事をするようになってほしくなかったというのが理由だった。

また、彼女がインターネット上で男とあんなチャットをすることも望んでいなかった!

彼女が男とあんなことを話していることを思い出した今、彼はいまだに受け入れることができなかった!

誠は「わかりました」と言って電話を切り、言われた通りのことを美穂に伝えた。

しかしこの時、美穂はそれほど嬉しくなかった。結局、圭介は彼女に会うことに同意しなかった。

翌日。

香織はダンススタジオに来た。佐々木校長は彼女の手を取り、彼女に感謝し続けた。「水原会長が投資してくれるそうだ。本当にありがとう。その、彼が君に何かしたとかいう訳ではないよな?」

香織は首を振って、「いいえ」と言った。

ちょうどその時、彼女のポケットの中にあった携帯電話が鳴った。それは美穂からの電話だった。

彼女はためらった後電話に出た。「香織、昨日はごめんなさい。衝動的な行動だったわ、怒らないで。もう水原圭介に頼んでおいたから、総合病院へ研修に来れるようになった。これは私の香織への償いでもあるの。朝の9時に公表よ」

香織は眉をしかめた。これは美穂の性格らしくなかった。

しかし、香織にとっては逃したくないチャンスだったので、「わかった」と言った。

彼女と佐々木校長は仕事を辞めた。佐々木校長はとても親切で、彼女にお金をくれた。「これは君の給料だ」

2つの封筒で合計8万円だった。

彼女は長くは働いていないので、これだけの給料があるはずはなかった。彼女はその中から少しだけ抜き取った。自分がもらうべきだけを取り、残りは受け取らなかった。

佐々木校長は彼女が善良な人であることを見て、こう言った。「もし将来、困難に遭ったら、私のところに来ればいい。私が力になれるよ。君を押し返したりはしない」

「ありがとうございます」彼女は心の底からそう言った。

ダンス
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