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第304話

 「なぜ彼女を選んだ?」圭介が尋ねた。

「彼女は愚かで、コントロールしやすいです。それに、元々清潔ではないから、新たに人を探す手間が省けます」誠が答えた。

圭介は彼を一瞥し、何も言わなかった。

黙認したということだ。

実際、誠がこうした行動を取れたのは、圭介が明日香を全く気にかけていないことを見抜いていたからだ。

圭介が彼女を一蹴しなかった理由は二つあると誠は考えていた。

第一に、明日香は圭介の命を救った恩があり、たとえ彼女を好まなくても、あまり厳しく接するわけにはいかない。第二に、彼女にはまだ利用価値があるからだ。

「人と人の違いって、どうしてこんなにも大きいんだろう?」誠は心の中で思った。

明日香と香織はどちらも圭介に恩がある女性だが、一方は利用されるだけの存在に成り果て、もう一方は過剰に愛されていた。

圭介が香織に対して見せる態度を見ていると、やはり同じ人間でも、

命運が全く違うことを痛感させられた。

「最近、彼らの動向はどうなっている?」圭介が尋ねた。

どうやら彼は明日香の話題にあまり興味がないようだ。

誠は会社の動向を常に見張っている。彼らは会社にスパイを送り込んでおり、長年の経営で何人かを配置するのは容易なことだった。

「現在、幸樹と響子は会社を立て直そうと全力を尽くしています。彼は新しく任命されたばかりで、大きなプロジェクトを成功させなければ社内での立場が厳しくなるでしょう。この数日間、響子は幸樹と常に一緒におり、浩二に目を向ける時間がありません。そんな時に、理解のある女性が側にいることは非常に重要です」

最後の一言、誠は慎重に言葉を選んで言った。

彼と圭介はその意味を理解していた。

彼らがさき話していた明日香こそ、浩二の側に送り込んだ女性だった。

明日香は若くて美しい。この時期、響子は会社に全力を注いでおり、浩二を気にかける時間がない。まさに彼女がつけ込む絶好の機会だ。

一家を分裂させるためには、まず彼らの絆を崩さなければならない。

今、すべての計画は圭介の計画通りに進んでいた。

一つ一つ打破し、順番に瓦解させるのだ。

「分かった。彼らの動向を常に見張って、何かあればすぐに報告してくれ」圭介が言った。

「承知しました」誠が言った。「それでは」

誠は部屋を出て行った。

香織も誠が出る前に自分の部屋に戻っ
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