共有

第198話

 金次郎は長年彼に仕えてきたので信頼していたが、今回の件で多少のわだかまりが生じた。

今度は彼に対する試みでもあった。

金次郎が本当に脅されていたのか、それとも他の理由があるのかを確かめたかったのだ。

……

ローズガーデン。

鎮静剤の効果が切れ、香織が目を覚ました。

手足を縛られて動けず、鎮静剤の副作用で身体に力が入らなかった。

彼女は相手が誰だか分からず、大声で叫んだ。「誰かいる?お腹が空いた!」

しかし誰も応答しなかった。

圭介は去り際に見張りの者に、彼女が目を覚ましたら電話をするよう指示していたが、部屋に入ることは禁止していた。彼女が叫んでも無視するようにと言っていたのだ。

見張りは声を聞き、圭介に電話をかけた。

圭介は会議中だった。百人収容の会議室には、会社の上層部や支社の責任者が揃っていた。

今日は四半期の総括会議で、ほぼ全員が出席していた。

圭介は会議の主座に座り、体を傾けて椅子に横向きに座り、片腕を机に置き、指先にはパーカーのペンを持って不規則に回していた。満足しない報告を聞くと、ペンの軸を机に叩きつけることもあった。

ある支社の四半期報告が明らかに不合格だった。圭介の表情に変化はなかったが、手に持っていたペンを机に置いた。

そして口を開こうとしたその時、机に置かれた電話が急に鳴った。

彼は手を伸ばして受話器を取り、通話ボタンを押した。

「彼女が目を覚ました。ずっと空腹だと言っています」

圭介は言った。「無視しろ」

「了解しました」

電話を切り、「報告を続けろ」と命じた。

彼はわざとそうしたのだ。

彼女が恭平と結婚するつもりなら、

彼女を殺さなかっただけでも大したことだった。

少しの教訓を与えないと、大人しくならない。

でもあの女は一度も大人しくないようだった。

彼の限界を何度も試し続けた。

しかし彼は、彼女に対して限界を超え続けていたのだ。

あの女を思い出すと、怒りを通り越して笑ってしまった。

重苦しい雰囲気がその低い笑い声で一気に破れた。

彼の気分が良さそうだと感じ、誰かが「水原様、何か嬉しいことがあったのですか?」と尋ねた。

圭介は顔を上げ、話しかけた人を見つめ、「そうだが、君とは共有できない。あとで、君の四半期報告が俺を満足させてくれれば、この愉快な気分を続けられるだろう」

その人
ロックされたチャプター
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status