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第157話

 早朝の空気はまだ少し冷たかった。

 彼女は両腕を抱え込んだ。

 もし早く恵子に伝えていれば、二人はせめて一度会うことができたかもしれない。

 豊が穏やかに逝ったとは言えない。彼が最後に恵子に会えなかったことを悔やんでいるのだろうか。

 「何を考えているの?」その声とともに、彼女の肩に一枚の服がかけられた。

 香織が振り返ると、圭介がいた。彼の顔立ちは深く、普段のきっちりとした姿とは違い、少し無造作で親しみやすい感じがした。彼女は視線を戻し、淡々と話し始めた。「今、お母さんに電話したの。もっと早く言っていればよかった。そしたら、お父さんに最後に会えたのに……」

 「それは君のせいじゃない。彼らには彼らの考えと選択があったんだ」もし二人が愛し合っていたなら、別れなかっただろう。

別れたのは、彼らがそう決めたからで、他人がどうこうできることではない。

お互い大人だから、自分で考えられる。

だから、香織は自分を責める必要はない。

香織は深く息を吸い込んで言った。「まだ少し時間があるから、少し休んで。私のせいで、一晩中眠れなかったんでしょ」

「大丈夫、君と一緒にいるよ」圭介は前を見つめた。

香織は彼を横目で見た。

人は親を失うとき、一番弱くなる。誰かがそばにいるだけで、たとえ何も言わなくても、一緒にいるだけで、孤独を感じない。

心が慰められるのだ。

朝が明けてきた。

香織は朝食を摂らずに出かけた。圭介が一緒に行こうとしたが、彼女はそれを断った。

圭介も暇ではない、彼には仕事が忙しい。彼はすでに長い間彼女に付き添ってきた。そして、今、彼女が自分の気持ちが落ち着いていることを知っていた。

彼女は弁護士事務所に行き、相続に関する法律について相談した。

相談の結果、佐知子と豊が結婚していなくても、翔太には合法的な相続権があることを知った。

彼女は矢崎家の財産を独占しようとしているわけではない。ただ、佐知子が遺産を得るために豊を怒らせて死なせたことに対しては、許せなかった。

だからこそ、佐知子の思い通りにはさせたくなかった。

しかし、翔太には合法的な相続権があり、佐知子が何も得られないようにすることはできない。

法的手段は無理なので、他の方法を考えなければならなかった。今は、まず豊の葬儀をしっかりと行うことが先決だ。これまで多くの不愉快な
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