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第4話

隼人の口から、まったく異なる物語を聞かされた。

その物語の中で、私たちは依然として完璧な恋人同士だった。彼は幼い頃からピカソやゴッホのような画家になることを夢見ていた。彼の筆で、私たち二人だけの世界を描きたいと。

しかし、私の記憶と違うのは、彼の世界では、結婚の三ヶ月前、私が大きな交通事故を目撃してから、隼人は私の異常に気付き始めたという。

私は頻繁に、事故に遭った人が彼だったり、私自身だったりする幻想を見ていた。人形を持ってベランダに立ち、それを高く掲げては地面に投げ落としていた。私はそれを「私の身代わり、完璧な身代わり」と呼んでいたという。

彼は心配して、すぐに病院に連れて行った。医師は一連の検査の結果、私が統合失調症だと診断を下した。

私は強制的に病院に入院させられた。私の誕生日の日、隼人は一緒に祝いたいと私を退院させようとした。でも私は彼から逃げ出し、雪緒の所へ行った。私は自分がタイムスリッパーという妄想を抱き、荒唐無稽な物語を作り上げていた。私の病状を安定させるため、彼は雪緒に私を騙してもらうことにした。本当に事故に遭ったふりをして、私を守るという名目で病院に連れ戻そうとしたのだ。

でも私は振り返ることもなく、ただ逃げ出した。

神様のお陰で、彼は私を見つけることができた。もし見つけられなかったら、私のいない人生なんて想像もできないと。私は彼の話を呆然と聞きながら、竜也さんを見上げた。竜也さんはただ眉をひそめ、隼人が差し出した診断書に目を通すと、複雑な眼差しで私を見つめた。

「千遥」

隼人が優しく私の名を呼ぶ。「家に帰ろう」

彼の優しい表情に、私の心は揺れた。もしこれが本当に私の妄想だったらいいのに、という考えが頭をよぎる。少し躊躇った後、私は彼が差し出した左手をしっかりと握った。

隼人は美しく微笑み、私の手を握り返した。私は体を硬くしたまま、つま先を見つめていた。彼の優しい声が耳元で響く。恋人の囁きのように。「やっと、見つけたよ」

雪緒が消えた。

隼人から診断書を見せられた後、すぐに雪緒に確認しようとした。でも彼女からの最後のメッセージは、札幌に気分転換に行くというものだった。それ以来、音信不通になってしまった。

隼人に家に連れ戻された。家の中の配置は私の記憶とほとんど同じだった。ただ、窓際に布で覆われた彫刻が一つ増えていただけ
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