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第3話

隼人は二ヶ月間入院した。退院の日、私が迎えに行くと、事故の加害者一家と出くわした。集中治療室の前で激怒していた時とは違い、私は冷静に、むしろ穏やかに会釈を交わすことができた。

二ヶ月で隼人は痩せた。目の輝きも、かつての煌めきを失っていた。言葉にできない悲しみの影が覆いかぶさっていた。かつての意気揚々とした青年は、今や生きているとも死んでいるともつかない姿へと変わり果てていた。

家に戻ってから、私は彼を避けるようになった。前世での経験が、昼も夜も消えない悪夢となって付きまとう。

元から自信を失っていた隼人は、私のそんな態度を見て、さらに悲観的になっていった。よく私に怒りをぶつけてきた。「僕がこんな役立たずになったから、離れたいんだろう?違う、君はとっくに離れたかったんだ。全部分かってるんだ。あの城田っていう先輩と、もうずっと怪しい仲だったんだろう?これでよかったな。僕は使い物にならなくなった。あいつのところへ行けるじゃないか!」

彼の言う先輩というのは、大学のサークルで知り合った城田竜也のことだ。

実は、私と彼の間には何もなかった。あのサークルの展示会がなければ、きっと接点すらなかっただろう。結局のところ、私の目に映る男性は、最初から最後まで、隼人ただ一人だったのだから。

記憶から我に返った時、隼人は既にドアに鍵をかけていた。手には鋭いナイフ。前世と同じ、歪んだ表情を浮かべている。私は後ずさりしながら、ベランダへと追い詰められていく。彼は私の腕を見つめ、今にも切り落としそうな目つき。彼の冷酷な眼差しを見て、何かが間違っているとしか思えなかった。

違う、全て違う。なぜこんなに早く起きてしまうの?なぜまた同じ結末を変えられないの?

もう一度、もう一度やり直せば、こんな愚かな過ちは絶対に繰り返さない!

二十階からの転落―――それはどんな感覚だろう。

轟く風が刃となって私の体を切り裂き、落下の衝撃で砕けたガラスの破片が眼窩に突き刺さっていく。引っ掛かった破片が衣服を引き裂き、皮膚が破裂する。鮮血が滝のように全身を這いまわる。

記憶が巻き戻されていく。

一秒、十秒、一分。

一年、五年、十年。

過ぎ去った日々が、夜明けの儚い夢のように消えていく。

予想通り、私は再び蘇った。

家で、タピオカミルクティーと新しいネックレスを持って私の前に立つ隼人を見た
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