第4話

私と明宏の結婚はビジネス上の政略結婚だったが、私は彼に一目惚れしていた。

他の理由なんてどうでもよかった。私たちが高校時代に一度顔を合わせたことがあった、それだけで十分だった。

その頃、私は転校したばかりで、市内の名門校でいじめの標的になっていた。

どれだけ必死に抵抗しても、一人では大勢に敵わなかった。

そんな絶望の中、彼が現れて私を助けてくれた。

だから、結婚相手が彼だと知った時は、嬉しくて一晩中眠れなかった。

しかし、私が知らなかったのは、彼が私と結婚したのは、彼の家の会社が資金難に陥っていて、私の家の資金がどうしても必要だったということ。

あの時彼が助けてくれたのも、実は由紀がいじめの首謀者で、彼女が告発されるのを恐れていたからだった。

だが、それでも私は結婚後の数年間、彼のために尽くした。

彼が外で食事に困らないように、毎日彼のために手料理を作って届け続けた。

彼も少しずつ変わり、私にプレゼントを贈ってくれたり、サプライズをしてくれるようになった。

私はその時、本当にこの幸せが一生続くと思っていた。

私が妊娠したと知ったその日、興奮して彼にそのニュースを伝えに行った。

だが、由紀のたった二言三言で、彼はその子供が自分のものではないと決めつけたのだ。

「お前、妊娠したって？由紀がこの前、お前が他の男と一緒にいるのを見たと言ってたぞ。この子はその浮気相手の子供なんだろう！」

私は弁解しようとしたが、彼はすぐにテーブルの上の花瓶を叩き割り、私を怒鳴りつけた。

「不貞女め......！」

魂には痛みなんて感じないはずだ。だが、なぜか私はあの日のバスタブに戻ったような気分だった。

息が詰まりそうな窒息感に襲われた。

私が動かないままでいると、明宏の顔色がますます険しくなっていった。

「もう30分も経ったのに、まだ来ないだと？自分の過ちに気づいていないのか」

「由美子、ちゃんとした理由があるなら今すぐ言え！」

私はただ彼を見つめていた。彼が由紀を抱きしめて焦り始め、手に持ったコップを今にも落としそうにしている姿を。

彼が口を開いた。

「由紀、ここで待っていなさい。すぐに確認してくるから、安心しろ。必ず彼女を引っ張って来て、謝罪させる！」

そう言うと、明宏は急いで立ち上がり、私が閉じ込められている場所へと向かって歩き出した