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第2話

それから、僕は彼女を支え続け、困難を乗り越えていった。

僕は彼女のために継母の犯罪証拠を集め、彼女を刑務所に送り込んだ。

旧部下の勢力を崩し、優秀な人材を引き入れる手助けもした。

また、資金調達や政界とのつながりを築くために奔走し、海外のプロジェクトを妨害していた黒社会のボスを一人で解決した。

さらには、東南アジアでのプロジェクトのために、敵対する会社から雇われた刺客に追われるほどになった。

彼女は、僕の裏方の支援のもと、温厚で優しい女子大生から、沿岸経済の命脈を握るビジネスウーマンへと成長した。

しかし、その矢先、システムが僕の問いかけに応答しなくなった。

いつの間にか、僕は桜子のことが好きになっていた。

彼女と屋台でビールを飲みながら、自分のビジネスのビジョンを語ったこともある。

興奮したときには、僕の手を握り、真剣に行政総裁の座を約束してくれた。

そして海辺を散歩しながら、彼女は僕の肩にもたれ、正義の企業家として国内の企業を守ると誓った。

こんなふうに彼女とずっと一緒にいられれば、僕はそれでいいと思っていた。

......

服を着替えて、いつものように会社に向かおうとしたとき、急にインターホンが鳴った。

「直美です、佐藤さん、開けてください!」

ドアを開けると、直美が立っていた。僕は少し驚いた。直美は僕のアシスタントだが、普段は運転手が迎えに来る。

「運転手は?」と僕は尋ねた。

「運転手は解雇されたんだ。佐藤さん、桜子が圭吾と結婚するために、自分の株の半分を彼に譲るそうだ。それだけじゃない。昨日、小林さんが君のことを一言言って、殴られて解雇され、退職金さえ取り上げられた」

僕は驚いて、水を飲もうとしていた手が止まった。

「小林さんは今日出勤しようとしたら、警備員に追い出されて頭を打ち、タクシーで病院に向かった。由川さんは酷すぎる。小林さんは彼女と一緒に育ったのに、これほどまでに……」

直美が会社の状況を報告した。

小林さんは、僕の恩師であり、会社の上層部への推薦をしてくれた人だった。

桜子が小林さんを処遇したのは、僕に関連するすべてを排除するためだった。

車の中、直美は最近の会社の動きを詳しく説明した。

桜子はまず、会社の主要な管理職の人を自分の好きなように変え、さらに田中グループの幹部数人を配置した。

そして圭吾に株を譲り、会社の重要な決定権を与えるために株主総会に参加させた。

創業メンバーたちは強く反対したが、桜子は彼らの秘密を暴露して、最も影響力のあるメンバーを追い出した。

一時は誰も口を出すことができなくなった。

圭吾が会社に入ると、自分の勢力を急速に拡大し、自分の味方でない者は一掃された。新しいアルゴリズムを作成し、全ての従業員を厳しく管理した。

駐車場で、二人の従業員が話をしていたのを聞いた。

「最近の圭吾、本当に恐ろしいね。会社を掌握しようとしてるみたいだ。由川さんがどう思ってるのかわからないけど、こんな横暴な男を許すなんて……」

「知らないの?佐藤さんはもうダメだって。昨日、由川さんに自宅待機を命じられて、今後復帰するチャンスはないかもしれないって」

「気づかないの?これからは佐藤さんがいない会社になる。早く立ち回らないと。本音を言えば、佐藤さんは惜しいけど、生活のために稼がないといけないからね」

直美が歩いてきて、二人に言った。

「佐藤さんがどれだけ皆さんに優しかったか、忘れちゃダメよ。恩を忘れるなって、昔から言われてるよね。佐藤さんを見捨てるつもり?」

「直美さん、今は映画の世界じゃないよ。生活があるんだ。田中さんに付いていれば、少なくとも解雇されることはない」

女性の従業員が言った。

「直美さん、考えてみて。佐藤さんに付いていても、行き詰まるだけだ。それに、由川さんが直美さんに対して不満を抱いていると聞いたよ」

二人が去っていくのを見守り、直美が僕を見た。

「ごめん、佐藤さん。問題を解決できなくて……」

僕は首を振って、大丈夫だと伝えた。

会社はすでに桜子の完全な支配下にあり、僕の立場は極めて不安定になっていた。

会社の入り口に着くと、警備員が僕の前に立ちはだかった。

「佐藤さん、田中さんからの指示あって、君は入場できない」

僕は二つの警備員に止められた。

「何も異動の通知は受けてないんだ」

僕は彼らに言った。

「田中さんの指示だ。佐藤さん、帰ってくれ。俺たちは働いてるから、ややこしくしないでくれ」

二人の警備員が言った。

そのとき、会社の入り口には多くの従業員が集まり、ほとんどが僕のことを笑いものにして話していた。

「これは佐藤さんですよ。目が節穴ですか?」

直美が後ろから歩いてきて、警備員を見た。

「直美さん、これは田中さんの命令です……」

二人の説明にもかかわらず、直美は僕を引っ張って中に入った。

「あなたたちは解雇された。後で給料を受け取って出ていけ」

エレベーターの中で、直美が深呼吸をして言った。

「佐藤さん、実は今日来たのも、辞表を提出するたにだったんだ。ここではもう働けない。圭吾に会社を乗っ取られることを認められない。僕は佐藤さんについて働きたい。他の人も同じ気持ちだ」

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