第9話

「7年？」

社長夫人が渡辺の耳をつまみながら言った。「お前、この7年間恋してたのにずっと私に隠してたのか？」

渡辺は耳を押さえて痛がりながら叫んだ。「ああ、でもその後ちゃんと話したじゃん！」

渡辺夫人はさらに一発平手打ちを食らわせた。「お前が話した時には、もうあのクズ男と付き合ってたんだぞ！どうやって助ければいいのさ！」

どうりで社長夫人が小島に対して厳しかったわけだ。渡辺が私を好きだと知っていたのだ。

二人のじゃれ合う姿を見て、私の心がほっこりした。

退院後、私はデザイナーに転職し、渡辺は姉に連れられて渡辺家の会社を継ぐことになった。

小島は会社を解雇された後、まともな仕事が見つからず、借金返済のためにあちこちでアルバイトをするしかなかった。

私は小島涼を連絡先からとっくに削除していたが、彼はまるで厄介な存在のように、私がどこに行こうと追いかけてきた。

「理佐、本当に俺が悪かった。あの再開発補償金に惑わされただけなんだ！許してくれ！」

「俺はあいつに本気で気持ちなんかない、ただ金が欲しかっただけだ！でも理佐は違う、俺は本当に理佐を愛してるんだ、理佐！」

「君のために心を入れ替えてやり直したいんだ。もう一度やり直そう、いいだろ？」

その後、彼が煩わしくなり、私は引っ越して渡辺の家に住むことにした。

小島が来なかったわけではないが、顔を出すたびに渡辺に追いかけられて殴られていた。

数回後、小島は渡辺の家の近くに現れることを恐れ、会社で私を待ち伏せるしかなくなった。

突然何かを悟ったようで、かき集めた金で小さな指輪を買った。

「理佐、俺と結婚してくれ！」

小島は毎日、私の通勤路で座り込み、毎日プロポーズしてきた。

私は少し感慨深かった。もし以前だったら、小島からのプロポーズに興奮して眠れなかっただろうに。

でも今は、ただ吐き気を催すだけだ。

どうして男って、失ってから初めて本気で人を大切にしようとするんだろう？

その後、渡辺が本気で嫉妬し始め、毎日私の通勤を送迎するようになった。

ある日、小島が酔っ払って渡辺の車の前に立ちふさがり、私に尋ねた。「理佐、俺はできることは全部やった、プロポーズだってした。どうすれば俺を許してくれる？」

私は皮肉たっぷりに答えた。「まず、うちの旦那に借りてる1,900万円を返してからにしなよ」