共有

第4話

「あげるかどうかは、あんたがこれを着られるかどうか次第ですね」

「遠藤さん、このドレスは店で一番大きいサイズですけど、この体型だと恐らく無理でしょうね。あげたところで役に立たないなんて、本当に残念だ!」

遠藤は信じられないという表情で振り返り、顔が腫れてボロボロの私がなおも彼女を侮辱するような言葉を吐くことに驚いた。

しばらくして、遠藤は震える指で私を指し、歪んだ口元で頷きながら「いいわ、いいわ、待ってなさい」と言った。

そう言うと、彼女は本当に上着を脱ぎ捨て、急いでウェディングドレスに着替え始めた。

そばにいた二人の女がすぐに駆け寄り、力を込めてドレスを引き伸ばし、ようやく遠藤を中に押し込んだ。

しかし、ウェディングドレスは明らかに変形して膨らみ、高級なシルクは伸縮性はあるものの脆く、軽く引っ張るだけで糸が裂ける音が聞こえた。

遠藤はそれに全く気付かず、スマホで自分の姿を撮りながら満足げに体をひねっていた。

「本当に似合うわね。今日にしちゃおうかしら、涼ちゃんにプロポーズして、どうせ涼ちゃんは必ず私と結婚すると同意するんだから」

周りの人たちもすぐに同調した。「そうそう、無理やり結婚を迫る人もいるけど、あおいがウェディングドレスを着るとサプライズになるわ!涼は絶対に……」

言い終わらないうちに、布が裂ける音が響き、全員が即座に口をつぐんだ。

ウェディングドレスのウエスト部分が無理やり裂け、裂け目はウエストから背中まで大きく広がっていた。

遠藤の脂肪がウェディングドレスから押し出されるように飛び出し、その姿は滑稽で笑えるものだった。

彼女は悲鳴を上げながら手で大事な部分を隠し、見ないでと叫んだ。

私はそれをこらえきれず、思わず吹き出してしまった。

その笑い声が、ウェディングドレスからなんとか抜け出した遠藤を完全に逆上させた。

彼女は自分のぶかぶかのシャツに着替え、ボタンを留める間もなく狂ったように私に飛びかかってきた。

「何を笑っているの?誰にも相手にされない愛人のくせに、何で私を笑えるわけ!」

「今日はお前をぶっ殺さないと、私の名前を捨ててやる!」

そう言うと、彼女はどこからか大きなハサミを持ち上げ、私の首に向かって刺そうとした。

もみ合っているとき、私の耳に聞き慣れた声が飛び込んできた。

「何をやっているんだ!」

周囲の空気が一気に静まり返り、宴会場の入り口に立つ小島が戸惑いながら問いかける声だけが響いた。「あおいが呼んだんじゃないのか?何をしているんだ?」

その時、遠藤は目が血走った状態から我に返り、目にはたちまち涙が浮かんだ。

「涼ちゃん、遅いじゃない!もういじめられて死ぬところだったんだから!」

彼女は手に持っていたハサミを投げ捨て、腰をくねらせながら小島の胸に飛び込んだ。

小島は遠藤を優しく抱きしめて言った。「よしよし、泣くなベイビー。どうしてこんな所に来たんだ?誰がいじめたんだ?旦那がちゃんと仕返ししてやるから!」

遠藤は小島の言葉を聞くと、すぐに得意げに顔を上げた。

「やっぱり旦那様は最高!でも大丈夫、あの女はもう私が懲らしめておいたわ!これで二度と私の男にちょっかい出そうなんて思わないはずよ!」

「ダーリン、もし他の女があなたにプロポーズしようとしたらどうする?」

小島は力を込めて遠藤を抱きしめ、息を整えながら答えた。「ベイビー、前にも言っただろう。この人生で俺が欲しい女はあおいだけだ。他の女なんかがウェディングドレス着て俺の目の前でプロポーズしようが、俺は一切見向きもしない」

二人は入り口で長い間抱き合っていたが、群衆が散らばった後、小島はようやくステージに横たわり、まだ恐怖で震えている私に気づいた。

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status