第 0388 話

彼が抱きしめると、海咲の体は一瞬硬直したが、ほんの数秒で鍋を置き、炒めていた料理を中断して尋ねた。「どうしたの？もうすぐできるからね」

しかし、州平はさらに強く彼女を抱きしめ、彼女の髪に顔を埋め、その香りで彼の不安な気持ちが少し和らいだ。「何でもない。ただ君と一緒にいると安心するんだ」

海咲は静かに鍋をかき混ぜながら、冷静に答えた。「キッチンは油っぽいし、あなたには合わないわ」

それに対して、州平は優しく言った。「君と一緒なら、どこだっていいんだよ」

以前なら、海咲は彼の言葉に心が温かくなり、内心は踊っていたかもしれない。

今、彼女の心はまるで静まり返った湖のように穏やかで、州平の甘い言葉も何