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第111話

和泉夕子は耳まで真っ赤になり、とても恥ずかしそうに言った。

「沙耶香、私は……彼は実は……」

どう説明すればいいのか。もし沙耶香は彼女が夜さんにいじめられたと知ったら、沙耶香の爆発的な性格では、きっと夜さんを探して問い詰めに行くだろう。

まるで昔、彼女が桐生志越に二度蹴られたと知ったときのように。そのときも彼女は袖をまくり、夜行バスで帝都に行って桐生志越を始末しようとしていた。

そのせいで彼女は当時、蹴られた後に心臓が衰弱したことを沙耶香に言えず、今まで隠してきたのだ。

和泉夕子が口ごもっているのを見て、沙耶香の目には心配の色が浮かんだ。

「まさか彼も霜村冷司と同じで、あなたと結婚したくなくて、あなたを囲おうとしているの?」

和泉夕子は急いで首を振った。

「違うの」

沙耶香は眉をきつくひそめた。

「一体どういうことなの?」

和泉夕子はため息をつき、もう隠せないと思い、沙耶香に正直に話すしかなかった。

沙耶香は聞き終わると、急ブレーキを踏んで車を路肩に停めた。

「何ですって?!」

「あなたが見知らぬ人にあれされたですって?」

彼女は自分の耳を疑い、もう一度繰り返した。

和泉夕子の顔は真っ赤になったが、仕方なくうなずいた。

「行くわ、警察に!」

沙耶香は怒って袖をまくり、警察署に車を走らせようとしたが、和泉夕子が急いで止めた。

「もう通報したけど、彼を捕まえるのは難しいの。それに彼に弱みを握られていて、逆らえないの……」

「どんな弱みよ?!」

和泉夕子は林原辰也に脅されたことを、一つ一つ沙耶香に伝えた。

「だから結婚式の日、林原辰也があんなに多くの人を連れてきたのは、私を使ってあなたを脅してたからなのね」

真相を知った沙耶香は、自責の念でいっぱいになった。

「夕子、あなたはなんて馬鹿なの。私のために、一人で危険を冒すなんて」

彼女は手を伸ばして、和泉夕子の痩せて目のくぼんだ顔に触れた。

彼女の夕子は美人だから、いつもこんな変態に目をつけられる。

昔、学生の頃、誰かにいじめられたり、尾行されたりすると、彼女は自分や桐生志越に話してくれた。

でも今はこんな危険なことに遭っても、一人で抱え込んでいる。

自分を巻き込みたくなかったからだろう。だから夕子はこうしたのだ。

沙耶香の目には心痛の色が満ちた。

「夕子、これか
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