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第144話

松本若子は、遠藤西也とともに服を着替え、ヘリコプターに乗って帰るところだった。

松本若子は魂が抜けたようにぼんやりとしていて、どこに行くかも言わなかった。ヘリコプターが降りた時、彼女はようやく遠藤西也が自分をとある別荘に連れて来たことに気づいた。そこは見知らぬ場所だった。

「降りて」遠藤西也は、松本若子が倒れないよう慎重に手を差し伸べた。

松本若子は周りを見回し、「ここはどこ?」と尋ねた。

「君がとても悲しそうだったから、行き先を言わずに連れて来たんだ。ここには僕と数人の使用人しかいないから安心して」

「西也、本当にごめんなさい。迷惑をかけてしまったわ」

道中、彼女は魂が抜けたように何も考えられなかった。

「迷惑なんてとんでもない。まずは少し休んで、落ち着いたら家に送るよ」

“......”

松本若子は再びぼんやりとして、彼に答えることなく、焦点の定まらない目で遠くを見つめた。

遠藤西也は何も言わず、彼女を連れて別荘の中に入った。

リビングに座ると、遠藤西也は彼女に水を注ぎ、彼女の隣に座った。

何か言おうと口を開いたが、彼女が呆然とソファに寄りかかり、まばたきすら忘れている姿を見て、彼は言葉を飲み込んだ。

彼女を邪魔しないように一旦その場を離れた。

さらに30分ほど経って彼が戻ると、松本若子はまだ同じ場所に座っていたが、先ほどの呆然とした様子とは異なり、今は泣き始めていた。声を出さず、涙をこらえながら震えていた。

藤沢修は本当に彼女を深く傷つけたのだ。

遠藤西也は、彼女を邪魔する気はなかったが、彼女の体調を心配していた。以前、彼女が入院していたことを知っている彼は、松本若子に近づき、「若子、君の痛みを完全に理解できるわけではないけれど、その気持ちはよくわかるよ。あの男なんて忘れろなんて言わない。君が傷つくのは当然だ。でも、泣きたいなら、思いっきり泣けばいいし、怒りを発散したいなら何かを壊してもいい。僕の家の物なら、好きに壊してくれ。君が少しでも楽になるならそれでいい」

松本若子は唇を噛み締め、涙をこらえながら何も言わず、顔をソファに埋めた。

彼女の必死にこらえる姿を見て、遠藤西也はますます心配になり、彼女の隣に座り直して、彼女の腕を掴んだ。「若子」

「放して」松本若子はまるで怯えた小動物のようだった。

彼女は手を振りほどこうと
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