第3話

前世では、私は夫の言うことに何でも応じて、家政婦のようだった。でも今の私は、もう違った。

私は手を広げ、「残業？霧島市のグルメ街での残業のこと？」と問いかけた。

彼は一瞬、慌てた様子で目を逸らした。「何を言ってるの？」

私はスマホを取り出し、車のデバイスを起動した。「本当に忘れたの？この車は私のだから、どこに行ったか知らないなんてあり得ないでしょ？」

「さっき、バルコニーから見たけど、美子と一緒に帰ってきたんだよね？」とさらに問い詰めた。

彼はネクタイを引っ張りながら、「みんな残業で疲れてるからって、ちょっと食べに行くのが何が悪いの？」と弁解した。

私は彼のこの滑稽な態度を見て、思わず吹き出した。「美子に料理してもらえばいいじゃん。得意そうだし」

「それと、外で何かコソコソやるなら、帰ってくる前にちゃんと口を拭いてからにして。臭うんだから」

彼は慌てふためく様子を見て、私は心の中でほくそ笑んだ。真央は嘘をつくのが上手で、前世の私はすっかり彼に騙されていたのだ。

「残業して食べに行くのが悪いの？知美、そんなことで騒がないでくれない？」彼はまだ言い訳を続けていたが、明らかに口調が弱くなっていた。

私は彼の見え透いた演技に付き合う気もなく、スマホを閉じてそのまま寝室に向かった。

すれ違う時、わざと立ち止まり、振り返ってこう言った。「あなたの荷物は全部、私が客室に移しておいたから。これからはあそこで寝てね」

真央は信じられない様子で私を見つめ、慌てて客室へ確認に走った。「知美！お前、何の真似だ！？」

彼はすぐに戻ってきて、私の手首を強く掴み、歯を食いしばりながら低い声で怒鳴った。「俺の我慢にも限度があるんだぞ！」

私は冷ややかに笑い、彼の手を力強く振り払うと、「パチン」という音と共に、すかさず彼の頬を平手打ちした。

真央の目には驚きと怒りが浮かんでいた。

私は手を引っ込め、冷たい口調で言った。「真央、私の我慢もこれで終わりよ。もう二度と私に関わらないで！」

一瞬の沈黙の後、真央は突然冷笑し、皮肉たっぷりに言い返してきた。

「知美、自分の今の姿を見てみろよ。まるで恨みつらみで生きてる女じゃないか！」

私は深く息を吸い、内心の怒りと悲しみを抑えながら、言葉を選んだ。

「そうよ、あなたのような最低な人間に時間を費やすべきじゃなかった。私たち、離婚しましょう！」

「離婚？」彼は冗談を聞いたかのように嘲笑し、軽蔑の色を隠そうともせずに続けた。

「知美、本気で言ってるのか？離婚してお前に何の得があるんだ？お前が本気で俺よりいい男を見つけられるとでも思ってるのか？」

私は冷たく彼を見返し、口元に皮肉な笑みを浮かべた。「真央、自分の価値もわからないの？まさか、自分がどれだけ大したことないかも知らないの？」

「言っとくけど、世界中の男が全員いなくなったとしても、あなたなんか二度と見向きもしないわ！」

「バタン！」と音を立てて、私は勢いよくドアを閉め、その偽善的な顔をシャットアウトした。

七年も、私は愚か者のように、彼のために料理を作り、家のことをすべて取り仕切ってきた。それなのに返ってきた言葉は「お前は怨みで生きてる女だ」だって？

「同僚を送っていった」だって？

どうせ、最初から浮気してたんでしょ？

その後の数日間、私は真央と美子の浮気の証拠を必死に集めていた。

中秋の夜、私は誰もいないリビングで、一人ぼんやりと窓の外に輝く月を見つめていたが、心の中は冷え切っていた。

前世で真央は私に言っていた。

「美子の旦那は昨日もまた出張でいないんだよ。彼女、霧島市で頼る人もいないんだし、可哀想だろ？」

「それに、俺は彼女の同僚で、しかもリーダーなんだから、月見団子を届けるくらい当然のことだろ」

しかし、今世ではそんな説明すらせず、ただ慌てて家を出ていった。

スマホの画面の光が、今の私の惨めさを照らし出し、美子のSNSでの目を引く投稿も映し出した。

写真には、冷たい光を反射するダイヤモンドのネックレスがあり、美子は自慢げに指でなぞっている。その口元には、隠しきれない満足感が浮かんでいた。

そして、彼女の薬指にあるリングは、真央の荷物を次の部屋に運ぶときに見たものだった。

「夫よ、これからの人生を一緒に」なんて皮肉なことだろう。美子のこの一言で、二人の男を手のひらで転がしているのだから。

夜も更けて、真央は帰ってこないと分かったので、私はオーナーグループを開き、メッセージを作成し、動画を添えて送信ボタンを押した。

彼女はネットの有名人になりたがっているのだから、今度こそ彼女を完全に有名にしてやる！