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第2話

私は必死になって部屋のドアを叩こうと立ち上がったが、無駄だった。

腹部の激痛が意識を引き戻し、薄い青色のパジャマは血で染まっていた。

子供が!お腹を押さえ、急いで救急電話をかけた。

「申し訳ございません、今外は台風がひどく、救急車は出られませんが、何とかしますので、頑張ってください」

絶望感に襲われた。救急車が来なければ、私は自分で行くしかなかった。

急いで上川大海の電話をかけ、七回連続でかけた後、八回目でやっとつながった。

「上川大海、病院に連れて行ってくれない?お腹が......」

言いかけたところで上川大海が遮った。「今は何をしているんだ、まだそんなことを言ってるのか?」彼の声には冷たさがあった。

「俺は救助隊の隊長だ。人を助けるのに間違いがあるのか?お前はいつも仕事のときに干渉してくるな」

「お前が選んだのは俺だ、今回は葵の番だろう」電話の向こうからは女性の柔らかい声が聞こえた。「大海、やっと来たね」

私はさらに言い訳をしようとしたが、向こう側は電話を切った。仕事のため、なんて立派な言葉だ。

私は上川大海と幼馴染で、高校時代にダンサーの山崎葵を知った。彼らが近づくのを見て、まるで恋人のようだった。高校卒業後、上川大海は私と山崎葵を郊外に誘ったが、その途中で事故に遭った。

何も考えずに上川大海を守るために飛び込んだ。頭がくらくらし、私たちの車はひっくり返った。車の中で意識があったのは上川大海だけだった。

上川大海は足でフロントガラスを蹴破り、最初に私を救出した。

しかし、時間がかかりすぎて、山崎葵の足が車の下に挟まれ怪我をした。

治療のため、山崎葵は海外に行き、上川大海と連絡が途絶えた。

その救命の恩もあって、山崎葵が去ったことで、上川大海は私を受け入れてくれた。

私は彼に良くしていれば、幼い頃の友情から彼も私に優しくしてくれると思っていた。

私たちが付き合い始めた頃は、本当にそうだった。

しかし、山崎葵が戻ってきてから、上川大海は帰宅する時間が遅くなっていった。

上川大海の母の誕生日の日、私は朝早くから料理を準備したが、食卓で突然電話が鳴った。

「うん、分かった、すぐ行くから、待ってて」電話を切ると、彼は私たちに言った。「救助隊で少し問題がある、行かなきゃ」

私の隣に座っていた彼の携帯からは明らかに女性の声が聞こえてきた。

今日は特別な日だから、彼を困らせたくなくて、遠回しに言った。

「家族みんなでご飯を食べているのに、食べ終わってから行けないの?」

その言葉が彼の怒りを買った。

家族の前で彼は私を睨みつけ、「これは仕事なんだ。毎日考えすぎるな、俺が稼がなければお前はどうする?」と言って、箸を叩きつけて出て行った。

彼の両親は私を慰めてくれたが、結局、雰囲気は彼によって壊されてしまった。

その後、短編動画プラットフォームで流れてきた映像を見た。

映像の中で、上川大海は背中を向けて洗濯機を修理していた。

女性が柔らかい声で尋ねる。「どう?うまくいった?」

上川大海はカメラを見て、私が見たことのないほど優しい目をしていた。

「もうすぐ終わるよ」その瞬間、私は感じた。

山崎葵が戻ってきた、上川大海の心は彼女のもとへ飛んでいった。

夜、上川大海が帰宅したとき、私はその動画を見せて、説明を求めた。

「正気?他人のアカウントを覗くなんて、陰湿なことをして」彼は私の携帯を奪い取り、床に叩きつけた。

「もう結婚したのに、そんなに信用できないの?」

彼の逆ギレに、私は自分に本当に問題があるのか反省し始めた。

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