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第16話

「おいおい、あの美女の隣にいるのは誰だ?あれは海門KSグループの社長、高城樹じゃないか」

優希は眉を上げて、興味深そうに笑みを浮かべた。「高城樹は潔癖で、こんな遊び場には絶対に足を踏み入れないって聞いていたけど、今日はどういう風の吹き回しだ?」

隼人と優希が彼を間違えたのも無理はなかった。

というのも、樹には四人の兄弟がいて、彼らは実は四つ子である。長男の樹と次男の栩は特にそっくりで、知り合いでない人が見たら間違えてしまうほどだった。

「くそっ、俺、嫉妬してるわ。あんな美人、俺の愛人にするのが相応しいのに。樹なんかと一緒にいて、何ができるっていうんだ?」優希はますます興奮しながら話を続けた。

階下にいる桜子は、その男性に向かって蜜のように甘い笑みを浮かべている。

隼人は胸が締め付けられるような感覚に襲われた。かつて、その笑顔は彼一人だけのものだった。

しかし、今や彼女は楽しんでいるようだ。まるで、彼女を中傷する暴露ネタなど全く気にしていないかのように。そして自分は一日中、彼女にどう弁明しようかと悩み、後始末に追われていたというのに。

「なあ、今夜俺が彼女を手に入れちゃおうかな。樹の女だろうが、俺は関係ない。ゴールキーパーがいても、俺ならゴールを決められる」優希はそう言いながら、唇を舐め、今にも動き出しそうだった。

「彼女に手を出すな。彼女は俺の妻だ」

優希は驚いて目を見開いた。「えっ?!」

「元妻だ」隼人は付け加えたが、その言葉を発するたび、喉に刺が刺さるような痛みが走り、炎が燃え上がるような苦しさを感じた。

「なんだって?!彼女があの風情を解けず、つまりお前の無愛想な元妻だって?隼人、お前は目が見えないのか、それともただの馬鹿なのか、それとも両方か?彼女は人間の宝石だぞ。お前がそんなに夢中になっている柔なんかより百倍も素晴らしい!」

隼人は冷ややかな目で優希を睨んだ。優希は怯えたように舌を出し、「まあまあ、冗談だよ。でもさ、昔、お前が俺に会わせてくれた時、そんな女なんかに会う必要はないって言ってたじゃないか。あの時は彼女が恐竜みたいな顔してると思ってたのに、まさか......おい、どこ行くんだよ?!」

優希が話している途中、隼人は既にドアを開けて部屋を飛び出していた。

......

桜子と栩は、酒を何巡かして、白い頬が桃色に染まっていた。

「桜子、大丈夫か?」栩は彼女が少し酔っ払っているのを見て心配した。

「もう一杯!サイコロ振ろう!」桜子はまだ酒に強いが、心に鬱積した感情のせいで酔いが早く回った。

その時、栩の上司から電話がかかってきた。大事な仕事の話かもしれないので、彼は妹に謝りながら言った。「桜子、すぐ戻るから、ここでおとなしく待っててくれ」

桜子は優雅に手を振り、「どうぞ!」

一時的に「防護網」が外されると、周りの男たちはまるで血の匂いを嗅ぎつけたサメのように、彼女に近づいてきた。桜子は彼らを見渡し、まるでホストを選んでいるかのようだった。

この男は背が低い、この男は痩せすぎ、この男は鼻が低い、この男は目が小さい......

誰一人として、彼女の前夫には及ばない。

残念なことに、あの美しい外見は、ただの飾りであり、彼女の全てを裏切ったのだ。

その時、桜子は隣の席で、柔の兄、澤馭が他の男たちと共に、ある女の子に無理やり酒を飲ませているのを目にした。そして、その中の一人がこっそりとグラスに薬を入れ、それを澤馭に手渡すのを目撃した。

瞬間、桜子の怒りが頂点に達し、立ち上がって彼らの方へと歩み寄った。

「おやおや、美女がやってきた!」男たちは桜子を見るなり、よだれを垂らしそうになった。

澤馭はこの絶世の美女を目にした途端、腕の中の女にはもう興味を失った。

「楽しそうね、私も混ぜてくれない?」桜子は酔いを帯びた目で、さらに魅力的な表情を浮かべた。

「お嬢ちゃん、どう遊びたいんだ?お兄さんが何でも付き合ってやるよ」澤馭は下卑た笑みを浮かべ、唇を舐めた。

桜子は、薬の入ったグラスを手に取り、「簡単よ、これをあなたが飲みなさい」

その場が一瞬静まり、澤馭の顔が険しくなった。

誰もがその酒にたっぷりと薬が入っていることを知っている。愚か者だけが飲むだろう。

「飲まないの?じゃあ、私が飲ませてあげるわ!」

桜子の声は冷ややかで、彼女の杏のような瞳が鋭く光った。そう言うや否や、彼女はそのグラスの中身を澤馭の顔にぶちまけた!

周りの人々は驚愕し、女の子は恐怖で叫び声を上げ、後ずさりした。

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