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第97話

紗枝は言い続けた。「美しさが好かない女の子はいない。

「多分前の私は卑怯で、自分が好きな物を隠しただろう」

啓司はこれを聞いて、行き苦しくなった。

「つまり、前の貴方は全て僕の為だったのか?」

紗枝は頭を上げて彼の視線に合わせた。「私が言ったじゃ、覚えてないの。でも、はっきり教える。私は化粧が好きで、美しく明るい服も好きで、アクセサリーも好きだ」

前、紗枝はグレーの服を着て、化粧もしなかった。

それは、啓司を怒らせないためだった。

家族が啓司を騙したから、彼女は派手な服で彼を怒らせてはだめだと思った。

彼女は一度、赤いドレスを着て外で歌を口ずさみ、花に水をやるだけで彼に嘲笑されたからだった。

「夏目家はよくやるね。人をだまして、ゆったりと派手な服を着て、話したり笑ったりして、安心できるのかよ」

その後、家では、彼女笑わないし、派手な服を着ないで、嬉しく見せなかった。

これらを知らないくせに、好きではなかったと言って!

ばかげたのか。

紗枝は手を握りしめ、指先が手のひらに深く沈め、血が出てまで緩めなかった。

彼女を押し寄せながら、彼女の体に良い匂いを嗅ぎつけ、少し戸惑った。「どうして教えてくれなかったの?」

紗枝は唖然とした。

彼は片手を出して彼女の細い腰を抱きしめた。

身を乗り出し、顎が彼女の細い肩に乗せた。

「どうして、僕が嫌われたような気がする」

紗枝の喉が綿の塊に塞がったようになった。

私が言うべき言葉だったのに!

明らかに彼は自分のことを憎んだ!

彼女の声は詰まっていた。「放してくれないか?」

啓司は手放さなくて、却って彼女をしっかりと抱きしめた。

「紗枝、どれくらい探したか知っている?

「まあいい。君は恩知らずものだ」

紗枝は少し後悔した。記憶喪失のふりをしなかったら、きっと彼を問い詰めてやると思った。

誰が恩知らずか!

啓司の体が何でできているのかわからなかった。今でも眠りに落ちなかった。

紗枝は彼に合わせて話を続けなきゃ。「黒木社長、こんな話をして、葵が怒ったらどうする?」

この時、啓司の唇が彼女の耳に落ちた。

紗枝は震え、反応できなかった。気が付いたら、唇が啓司に塞がれた。

キスしながらコートを脱ぎ始めた。

紗枝の体の血液は止まった。

コートを投げ捨て、大きな手で紗枝の後頭部
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