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第90話 情報があった

 渡辺翔太の名前が画面に出た。

入江紀美子は少し疲れていたが電話に出た。「何か御用?渡辺家の若様?」

「紀美子、今どこにいる?」翔太の声は少し疲弊しているに聞こえた。

紀美子「まずは要件を」

翔太は暫く黙ってから、「狛村静恵は俺の妹じゃないと思う」

「それは私とどんな関係があるの?」紀美子は落ち着いて聞き返した。

「今はジャルダン・デ・ヴァグにいる、そうだろう?」

「うん」

翔太「紀美子、俺と一緒にDNA検査を受けないか?」

紀美子「若様、あんた達は静恵とDNA検査をやってないの?やったのなら、彼女だと確定できるし。

何故私に聞くの?私を笑われ者にする気?」

翔太の声は無力感がにじんでいた。「私はこのことを信じていない、君が行きたくないならそれでいいが、私は調べ続ける」

紀美子は戸惑い、何故翔太がそこまで頑なに拘っているかが分からなかった。

血縁者の調査だから、渡辺家は緻密に行わないわけがなかった。

既に確定しているのなら、これ以上否定する必要はあるのだろうか?

紀美子はお茶を濁した。「翔太さんがやりたいことは、私には止められないし、私に相談する必要もないわ。

私のことを覚えているだけで感謝してるわよ。他に用件がなければ、切るね?」

翔太「……分かった」

携帯を置き、疲れた紀美子は目を瞑った。

彼女には、静恵がこれからどれだけいい気になるかは想像できた。

彼女は今、手に入れたデータが役に立つことを祈るしかなかった。

……

夕方。

杉浦佳世子はジャルダン・デ・ヴァグに着いて、松沢初江は彼女を2階に案内した。

部屋に入り、佳代子はいきなり飛び掛かってきた。「紀美子、その顔色、余計老けて見えてるじゃない!」

紀美子は下意識に顔を触ってみた。「私はまだ鏡を見てないの」

佳代子は遠慮せずにベッドの縁に座り、部屋を見渡した。「へえ、これがボスの部屋なんだ」

紀美子は目線を下ろして、「うん」

「よくこんな部屋に住ませられて鬱にならなかったね!」佳代子は舌鼓をしながら、「壁が灰色以外、他全部黒色じゃん」

紀美子は苦笑いを見せながら、枕の下からリーダーを出して、佳代子に渡した。

「データの解析はどれくらいでできる?」

佳代子はリーダーをポケットに入れ、「夜、私の友達が言っていた。大体3時間でできるそうよ」

紀美子は頷き、「
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