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第68話 証拠はない

紀美子は驚いた。「私を襲ったのも大樹って人の仕業なの?それに病院の件は?!」

剃髪の男は言った。「あの中傷のポスターも俺らが貼ったんだ。」

紀美子は一瞬にして形相を変え、彼らに詰め寄った。「静恵!静恵を知ってる?!」

晋太郎は感情を失った紀美子を見つめ、複雑な感情を押さえていた。

剃髪の男は首を振った。「何度も言ったろ、俺らは何も知らないんだ!大樹が知ってるかどうかは分からない。そういうことは大樹を捕まえないと分からない。」

紀美子の顔色は青ざめ、静恵が関与していることをよく理解していたが、彼女は巧妙に自分を偽装していた。自分に手を出した人々を捕まえても、彼女に何もすることはできないだろう。

真実を知る彼女は、ただ我慢するしかなかった。

さらには、証拠を見つけようと執拗に努力することすら、愚か者のように見えた。

紀美子が怒りで震えるのを見て、晋太郎は静かに彼女をなだめた。「紀美子、落ち着いて。」

紀美子は晋太郎を見返し、怒りをこらえながら尋ねた。「晋太郎、私を信じてくれるの?」

晋太郎は厳しい表情で答えた。「静恵がそんなことをするはずがない。」

「彼女をそんなに信じるの?」紀美子は冷笑し、「私との3年間より、彼女との短い間のほうが重要なの?それとも、彼女があなたを助けたから全てを信じるの?!」

晋太郎は不快そうな表情を浮かべ、「証拠だ。」

紀美子は鼻が酸くなりながら言った。「証拠はない!」

彼女に証拠があれば、静恵はこんなにも余裕を持っていられるだろうか!

「だったら彼女を責める資格はない。」晋太郎は眉をひそめた。

言い終わると、紀美子から視線をそらし、立ち上がってボディガードたちに指示を出した。

「彼らを警察署に連れて行け。首謀者を探すのを続けろ。」

こうして、この件は終わりを告げた。

……

紀美子は疲れ切った体を引きずりながら、楡林団地に戻ってきた。

彼女は携帯電話を飛行モードにして、メッセージの返信以外の時間は部屋にこもりっきりで原稿を描いていた。

あっという間に半月が過ぎ、再び検診の日がやってきた。

紀美子はタクシーで病院に向かい、検査の後、医者から驚くべき言葉を投げかけられた。

「三つ子ね、前になんで気づかなかったのかしら。」

紀美子は息をのんだ。「三つ子?!」

医者は超音波検査の結果を紀美子に渡し、「超音波
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