共有

第605話 ただの第三者

晋太郎は眉をひそめた。このことは彼自身もずっと疑問に思っていた。

なぜ紀美子は自分が渡辺家の一員であることを認めないのか。

しかし、紀美子が詳細を語らないので、彼も彼女の個人的な事情を詮索するつもりはなかった。

この期間、紀美子にも落ち着く時間が必要かもしれない。

病室の中で。

静恵は爪を噛みながら、晋太郎の側にとどまるために何か方法がないかと考えていた。

少し考えた後、彼女は突然、次郎がよく使っていた影山さんを思い出した。

影山さんに頼むのを、しばらく忘れていた。

静恵は影山さんの電話番号を探し出し、すぐに電話をかけた。

しばらくしてから、影山さんが電話に出た。

静恵は媚びるような口調で言った。

「影山さん、すみません、またお手数をおかけします」

影山さんは以前のように冷たく、「何か用か?」と尋ねた。

静恵は、晋太郎が自分が念江の側にいることを許してくれないことを影山さんに伝えた。

影山さんは話を聞いた後、「君が彼らを引き裂けないなら、世論を使って紀美子を彼から遠ざけるしかないな」と冷ややかに言った。

「世論?」

静恵は困惑した。

「どういう意味ですか?」

「その件は任せてくれ。後でメディアが君に接触してきたら、私が教える台詞を言エバいい」

「わかりました。お願いします」

土曜日の朝。

佳世子は早くに藤河別荘に来た。

寒いのに、彼女はセーター一枚で、ダウンジャケットも着ていなかった。

紀美子は佳世子を見ると、「寒くないの?」と驚いた。

「とても暑い!」

佳世子は舞桜が作った朝食を食べながら言った。

「今年の冬はおかしいわ」

紀美子は朝の気温を思い出して黙った。

明らかに零度以下だった。

朝食が終わると、佳世子は二階を見上げた。

「二人は行かないの?」

「佑樹は今日学校でコンピュータの研修があって、ゆみは佑樹と一緒に行きたいって言ってる」

「ゆみはやっぱり佑樹に懐いてるね」と言いながら、佳世子は紀美子と一緒に別荘を出た。

「うん、お正月用品の買い物にはあまり興味がないみたいだね」

三十分後。

二人はショッピングモールの地下一階のスーパーに到着した。

佳世子は紀美子に言った。

「確認するけど、君たちの会社は明後日忘年会を開くんだよね?」

その言葉に紀美子は頭を抱えた。

「社員の意見を聞いたん
ロックされたチャプター
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status