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第556話 どう我慢できるのか

喬森は晴を知らなかったが、晴は喬森の写真を見たことがあった。

喬森を見て、晴が叫んだ。「喬森さん?」

資料を持っていた喬森が振り返り、晴を上から下まで眺めて、「あなたは?」と尋ねた。

晴は前に出て言った。「晋太郎さんの友人で、以前佳世子さんに服のデザインを依頼した者です。晴と申します」

喬森はようやく理解した。「ああ、何かご用件ですか?」

「晋太郎さんを探しに来たんですか?」

喬森は手に持った資料を掲げて、「新しいデザイン稿にいくつか注意すべき点があって、設計部と話し合いたいと思います。サンプル作成の際には気をつけないと……」と話した。

サンプル作成については晴もよく知っているが、確かこれは佳世子が担当している件であった。晴はこれが佳世子に会う絶好のチャンスだと思った。

「もし私の言うことを信じてくれたら、注意点を教えていただければ、私が伝えますよ。彼らは今一緒にいますから」

喬森は驚いた。「彼は私の弟子と一緒に?」

「紀美子さんが入院していることを知らないんですか?!」晴も驚いてしまった。師匠としてこんなこと知らないわけがないだろう?

喬森は立て続けに質問した。「入院?どの病院?どんな怪我をしたの?重い傷ですか?今は大丈夫?」

晴は喬森の質問に一つ一つ答えた。

答えを聞いて喬森の表情が和らいだ。「ああ、それなら問題ないですね。周りに人が多いようなので、私一人くらいいなくても関係ないよ」

晴は心の中で思った。「この師匠、本当に変わってるな」

喬森はデザイン稿を持ち上げて晴に押し付けた。「携帯番号を教えてください、注意点をすぐにメッセージで送ります」

「わかりました」

夕方。

晴は急いで撫寧県に向かった。

そして人民医院を見つけ、晋太郎に電話をかけた。

電話はすぐに繋がり、晋太郎の少し嗄れた声が聞こえた。「何だ?」

晴は入院棟に向かって歩きながら、「晋太郎、紀美子さんはどの病室に?」

「来たか?」晋太郎が尋ねた。

「喬森さんに会って、彼女からデザイン稿を持ってきた。あなたと佳世子さんに説明するように言われたよ」

晋太郎は晴に病室番号を教えた。

晴は足早に五階へ向かい、病室に入った。

病室内には佳世子さんの姿は見えず、晋太郎が資料を持っており、紀美子がベッドで寝ていた。

晴は肩を落とした。今佳世子さんの名前を出すのも変
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