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第540話 埋まってしまう。

 佑樹はメモを受け取った。「ゆみ、ママはこの壁を乗り越えるのが難しいことを知っているよ。

でも、ゆみは最も勇敢な子供よ。他の人が一生かけても経験できない冒険をしたのよ。

ママが帰ったとき、いつも通りの元気なゆみをママに見せよう」

佑樹が言い終わると、ゆみはメモをしっかり抱きしめた。

そして大粒の涙が次々と落ちた。「お兄ちゃん、絶対にママを心配させないから、絶対に!」

「ゆみは一番だよ!」佑樹は頷いた。

朝。

紀美子と朔也は州城に到着し、荷物をすべて車に積み込み、撫安県に向かって出発した。

車に乗り込むと、紀美子はすぐに子供たちに電話をかけた。

すぐに電話が繋がった。

佑樹とゆみの息を切らした声が同時に聞こえた。「ママ、もう飛行機を降りたの?」

ゆみの嬉しそうな声を聞いて、紀美子は微笑んだ。「どうしたの?走ってるの?」

「そうよ、ママ!」ゆみが急いで言った。「舞桜姉さんと走ってるから!」

紀美子はホッとした。「ゆみは本当にすごいね。ママは州城に着いたよ。荷物を運んだらすぐ戻るよ」

「わかった!お兄ちゃんと一緒にママの帰りを待ってるよ」

そして少しの話を交わし、紀美子は電話を切った。

運転手が紀美子を見た。「若く見えるのに、子供がいるんだね」

紀美子は頬を触った。「見えない?」

「見えないよ、都会から来たの?」運転手が尋ねた。

紀美子は頷いた。「そうよ、確かにここからはかなりの距離がある」

「こんな急な山道を走るのは初めてだろう?」運転手は言った。

「そう、運転手さんは地元の人?」紀美子は聞いた。

「俺は子揚山から来たんだ、ここが俺の故郷だ!」運転手は言った。

「本当に?じゃあ、あそこの状況を教えてくれる?」紀美子は驚いた。

「苦しいよ」運転手はため息をついた。「この言葉以外、何を言えばいいかわからない。俺は文化人じゃないから、あまり言葉は使えない……」

「大丈夫」紀美子は言い、晴れ渡った空を見上げた。「今日は天気が良いね」

「今は良いけど、1、2時間後には変わるかもしれないよ」

その言葉を聞いて、紀美子は心配して尋ねた。「もし雨が降ったら、下りられる?」

「それは無理だ!」運転手は言った。「帰り道に雨が降らないように祈るしかないよ。そうじゃないと、道が滑って、車が山のふもとまで転げ落ちる危険がある」

紀美子は背
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