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第185話 特に隠れようとしていないけど?

 ちょうどその時、パーティホールの音楽がいきなり止まった。

メッセージ受信の通知音が特段にはっきりと聞こえてきた。

森川晋太郎の冴え切った視線は入江紀美子と露間朔也に留まった。

すぐ、朔也は携帯を取り出した。

彼が携帯画面に表示された着信通知を見た時、警戒してこっそりと晋太郎を覗いた。

目が合った瞬間、朔也の眼底に取り乱した眼差しが浮かんでいた。

そしてすぐに何もなかったように携帯をポケットに戻した。

それを捉えた晋太郎は、口元に冷たい笑みを浮かべ、朔也がGであることを確信した!

道理であんなでかい優遇を叩きだしても彼は自分の方についてくれなかったのは、紀美子の方についたからだったか。

なに。

彼は行動で忠誠を誓うつもりだったのか?

紀美子に、たとえどんなに強い誘惑があっても、彼は彼女しか眼中にいないと伝えたかったのか?

男は冷たいオーラを発しながらテーブルの上のワインを一気に飲み干した。

杉浦佳世子は隙を見て、晋太郎にワインをもう一杯注いだ。

ボスが酔っぱらってくれれば、紀美子にちょっかいを出せなくなる!

そして佳世子は晋太郎を煽て始めた。「社長、一人で飲むのはアレじゃないんですか?田中社長もご一緒に飲みましょうよ!」

そう言いながら、彼女は田中晴にも酒を注ごうとした。

晴は素早く手でグラスの縁を塞ぎ、「何故君は自分のボスと飲まないんだ?怖いからか?」と問い詰めた。

佳世子は口元にあざ笑いを浮かべ、「私の身分が低すぎてボスと飲むにはレベルが足りないけど、あなたはボスのお友達なのに、何で飲まないの?」

「やはり君も、晋太郎が自分と飲まないのを分かっているんだな。こうしよう、私が君と飲んだらどうだ?」晴の眼底に笑みが浮かび、軽く佳世子を睨んだ。

しかしその眼差しは佳世子から見れば、露骨な挑発でしかなかった!

佳世子は眉を寄せ、わざと声のトーンを高めて問い詰めた。「何その目は?!」

「目など関係ない、私と飲む勇気があるかどうかだけを答えて」

佳世子は歯を食いしばり、酒に関してはまだ怖気づいたことはなかった!

「いいわ!今夜はあなたが潰れるまで付き合ってやろうじゃない!」

紀美子「……」

何で喧嘩をしていたら酒の勝負になったのだろうか??

紀美子は軽くため息をついて、ワイングラスを持ってホテルの裏庭に歩き出した。

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