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第179話 お母さんに会いに行こうか

紀美子は車を降り、バラの前に足を止め、眉をよせた。

晋太郎の意図を全く理解できない。

静恵に浮気されたから、また彼女の元に戻ろうとしているのか?

呼べば来て、用が済めば去るような犬のように見なしてるのか?

紀美子は冷笑を浮かべ、携帯電話を取り出し晋太郎に電話をかけた。

すぐに、男性の声が聞こえてきて、調子は意外と良かったようだった。「何か言いたいのか?」

紀美子は不機嫌そうに言った。「森川社長、お金が余っているのでしょうか?こんな無駄遣いをするとは。」

晋太郎の立派な顔に細かい笑みが突然に凍りつき、表情は次第に冷たくなった。「何を言っているんだ?」

紀美子は冷たく返した。「バラを送るなんて、あなたしか考えられない幼稚なことだわ。」

聞いて、晋太郎の表情は急に沈んだ。

田中は、女性には花が必要だと言いっていたのに!

結果、紀美子は感謝の気持ちもなく、そんなことを言うのか?

自分はいつ女性にこんなことをしたことがあったのだ?彼女は嫌がるなんて……!

面子を保つのに、晋太郎は口を固く結んだ。「暇だから、花を送ったと思ってるのか?」

紀美子はちょっと驚いて、しばらくして言った。「じゃあ、あなたのものじゃないなら、売りに出すからね。」

そう言って、電話を切った。

晋太郎の目がギュッと締まり、彼女はさっき何を言ったか?

バラを売りに出す?

携帯電話をテーブルに投げ、顔色を暗くして立ち上がり、三人の子供の部屋へ向かった。

扉を押し開き、三つの子供たちがカーペットに座り、遊んでいる姿が映った。

晋太郎の姿を見て、子供たちは一斉に顔を上げ、迷い惑いの表情で彼をじっと見上げた。

晋太郎は子供たちの顔をひと周り眺め、ついにはゆみの顔に視線を落とした。

佑樹は上手くふるまって罠を仕掛ける子だ。情報を引き出すには、ゆみから聞き出すしかない。

「ゆみ。」

晋太郎は沈みた声で呼びかけ、その声にゆみは小さな体を縮め、震えた。

「なに……なによ?」

ゆみは美しい大きな目を晋太郎に向け、幼い声で慎重に尋ねた。

晋太郎は、声を柔らかくして言った。「出てこい。話がある。」

ゆみは無助な顔で佑樹に視線を投げ、佑樹は頷いて、自分がいるから怖がらないでと彼女に安心させた。

佑樹の様子を見て、ゆみは立ち上がった。

彼女は晋太郎に続いて、書斎へ向かい、途中
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