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第213話

賀茂時也は彼女の赤い唇をつつき、軽やかに唇の形をなぞった。甘い味わいが広がっていく。

南雲華恋は彼の悠然とした態度にさらに緊張した。

賀茂時也は悪戯っぽく彼女を見つめ、「おとなしく......」と言った。

彼の声にはいつも魔力があり、低くて魅力的で、まるで彼女を無限の闇へと引き込むかのようだった。

南雲華恋は賀茂時也の腕を抱きしめ、ぼんやりと天辺の月を見上げた。

空の月は木の枝の後ろにあり、南雲華恋を見つめ、世の中を見つめている。

万華国府。

瀬川結愛は何度も腕時計を確認した。

賀茂時也はすでに約束した時間を1時間以上遅れていた。

彼女の眉は次第に寄せられた。

携帯電話を取り出し、マネージャーに電話をかけるべきか迷った。

彼女は賀茂時也の番号を知らなかった。

しかも契約によれば、賀茂時也だけが彼女に会うことができ、彼女は賀茂時也に連絡する資格がなかった。

その時、彼女の携帯電話が鳴った。

見知らぬ番号だった。

瀬川結愛は嬉しくなり、急いで受話器を取った、「賀茂様ですか?」

電話の向こうの小清水浩夫は聞き取れず、笑って尋ねた、「そちらは瀬川結愛さんですか?」

瀬川結愛はすぐに、相手が賀茂時也ではないことに気づいた。

彼女は警戒して言った。「あなたは誰ですか?」

「私は小清水浩夫と申します」

瀬川結愛の目はすぐに大きくなった、「四大家族の一つ、小清水家の当主、小清水浩夫ですか?!」

「そうです、こんにちは、瀬川さん」

瀬川結愛は気持ちを落ち着けようと努力し、声はまだ震えていた。「こんにちは」

「瀬川さん、いつお時間がありますか?お茶でもしましょうか?」

瀬川結愛は驚いて太ももを擦り合わせた。これは以前は考えもしなかったことだった。

「えっと、私は......いつでも大丈夫です」

小清水浩夫は言った。「それでは時間が決まりましたら、秘書をお迎えに行かせます」

「はい、はい、わかりました」

小清水浩夫は電話を切り、微かに眉をひそめた。

執事はそれを見て、急いで尋ねた、「当主様、どうしましたか?うまくいっていないのですか?」

小清水浩夫は首を振り、行ったり来たりした。「本当に、賀茂時也の妻は瀬川結愛で間違いないのか?」

「はい、そして今ネットでも騒がれています」

「でも、賀茂時也がこんな女性に目をつけるとは思えな
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