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異世界アルカディア①

last update Huling Na-update: 2025-03-20 17:00:57

ここは異世界アルカディア

僕、城ヶ崎彼方はこの世界の人間ではない。

一年前、異世界ゲートを創りこの世界へとやってきた。

元の世界は、ゲートの事故により大量の死者を出し僕は大罪人となってしまった。

友人だった春斗も世話になった五木さんも、黄金の旅団の人達も、たくさん亡くなった。

僕のせいで。

だから、願いが叶うと言われている世界樹を求めてこの世界へと来たんだ。

ただ、闇雲に探しても見つからない。

僕はアレンさんの勧めで冒険者ギルドに登録し、最低等級の冒険者としてこの世界で第一歩を踏み出した。

今は、ただ強くなるために依頼をこなす毎日。

この世界に来たばかりの僕では、世界樹を見つけても辿り着くことすら難しいとのことだった。

自分の身は自分で守る、それがこの世界アルカディアでの常識。

紅蓮さんから貰ったこのレーザーライフルと、小剣を手に生きていく。

アカリは常に僕に寄り添ってくれる。

今ではかけがえのない存在だ。

今日もまた一日を無事に生き永らえた。

この世界では死がすぐ近くに潜んでいる。

依頼に失敗して死亡、魔族の侵攻、暗殺。

僕は絶対に死ねない。

生きて生きて生き抜いてやる。

いつか必ず、元の世界に戻すために。

――――――

「ここが……異世界……」

辺りを見渡すと、見たこともない木に紫色の花がそこら中に咲いている。

空は曇天というに相応しい灰色。

想像していた異世界は、もっと優雅で美しいイメージだったが、ここはもはや魔界といってもいいほどだ。

ゲートから飛び出てきた勢いと風景の衝撃に尻餅をつく。

アレンさんがそんな呆然とする僕に近づきにこやかな顔で手を差し出す。

「ようこそ!異世界アルカディアへ!!」

「あの……これが異世界……ですか?」

「ああ、忘れてないかい?ゲートが繋
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  • もしもあの日に戻れたのなら   異世界アルカディア②

    「団長、カナタくんにもっと分かりやすく説明してあげたらどうですか?」 僕が首を傾げているとレイさんが団長に補足説明するように言ってくれた。「それもそうだね。この世界には冒険者の階級というものがあるんだ」 そこで知ったのは、冒険者にはC級、B級、A級、S級、SS級、英雄級、神話級と7つの階級がある。 A級でベテランの冒険者と言われるレベルで、英雄級までくると国に数人という程度の少なさになるらしい。 神話級は世界にただ1人。 アレンさんはもちろん世界3位の強さと呼ばれるだけあって、英雄級だ。 「英雄級までいくとね、任意のタイミングで陛下と謁見する事が許されるんだよ」だから皇帝陛下に世界樹の事を聞く、という事が簡単に言えたらしい。「ちなみに言うとね、二つ名はS級以上じゃないと付かないんだよ」 「てことは、この旅団ってかなりの上級冒険者ばっかりってことですよね」 「まあそうなるね。レイとアカリはSS級だし、他の団員も全員S級だよ」アカリの強さに驚き、そちらに顔を向けると心なしかドヤ顔を見せつけてきた。「あ、でも漣さんはどのレベルに位置するんですか?」 「カナタ、こっちの世界では元の名前を使うつもりだ。だから今後はレオンハルトと呼んでくれ」 「分かりました、レオンハルトさん」一ノ瀬漣はあくまで向こうの世界でしか使うつもりがなかったらしく、この世界では剣聖として名を馳せている以上、レオンハルトと呼ばなければならないらしい。「それで私の事だが、剣聖と呼ばれる者は階級が存在しない。別枠として扱われる」 「じゃあ強さの指標はないってことですか?」 「そうなるな。ただ前も言った通り私ではアレンに勝てない。しかし魔神には唯一勝てる存在だ。だからこそ階級がないという扱いになる」剣聖は唯一魔神を消滅させる聖剣を使うことができる。 しかし必ずしも戦闘能力が他を圧倒するかと言われればそうでもないらしい。 本人曰く、SS級よりは強いが英雄級には勝てるかどうか、といった曖昧な感じだそうだ。

    Huling Na-update : 2025-03-21
  • もしもあの日に戻れたのなら   異世界アルカディア③

    「だいぶ歩いたから見えてきたよ。僕らの国が」アレンさんに言われ、前方をよく見ると緑の風景が見えてきた。「しかし、魔神もこの世界に逃げてきたからまた討伐隊を組み直すことになるだろうな」魔神と四天王の一人、ゾラもこっちの世界に逃げてきたはず。魔族領では会わなかったのも、恐らく軍を再編するために僕らには手を出さず準備に取り掛かっているのだろう。暫くアルカディアの話を聞いて歩いていると、次第に風景は魔界ではなくのどかで優しさのある風が吹き抜ける草原へと出た。「ここからは適当に野宿をして、明日には一番近い街につくかな」「そこで、馬車を借りて一気に帝都まで行きましょう」アレンさんとレイさんはどこで野宿をするか、馬車を借りる為のお金は、などと話し合っている。「そういえば……こっちの世界では何年経っているんでしょうか?」僕が何気なしに聞いたその言葉で全員が固まる。「た、確かに……時の流れが違うのであれば面倒だな……」「街につけば分かることです。とりあえず今は野宿の場所を決めましょう」みんな忘れていたようだが、もしも時の流れが違うとなった場合、アレンさん達は死んだことになっている可能性もある。そんな中、いきなり街に現れたら騒ぎになるのではないか。「なんとかなるわよ、多分」フェリスさんは楽観視しているが、本当に大丈夫なのだろうか。「私達がつけているこのバッチ。黄金の旅団を示す物なんだけどね、これは討伐隊が作られた時に私達が主導で動きます。って陛下や上の立場の人たちにこのバッチを見せているわ。だからこのバッチでどこの誰かは判断できると思う」「そうなんですね」金色の剣が2本、✕印のように交差し、真ん中に3枚のコインが描かれたバッチ。それを見れば黄金の旅団だと誰もが分かるほど有名だという。「あ、それとボクらの拠点は宿り木って名前だからね、わかりやすくていいだろ?」なんと、地球での拠点と同じ名前

    Huling Na-update : 2025-03-22
  • もしもあの日に戻れたのなら   異世界アルカディア④

    見上げるほど大きな門扉が開く。衛兵の上司だろうか?誰か奥から走って駆け寄ってくる。必死の形相をしていて少し怖いが、アレンさん達は普通の顔をしている。場慣れしているのだろうか?「まさかっっ!!アレン様!!生きておられたのですか!いえ、今まで一体何処に!?それより人数が少なく見えますが……」「あはは、やっぱりそういう反応なんだね。とにかくこの街の領主に会わせてもらえるかな?」「もちろんです!こちらへどうぞ!!」矢継ぎ早に繰り出される質問もアレンさんはその場で答えずのらりくらりと交わす。 やはり数年は経っていそうな反応だ。街に入るとあちこちから驚愕の視線が降り注ぐ。僕はフードを被り出来るだけ目立たないように隠れながら歩くことにした。「こちらで領主がお待ちになっております。どうぞお入りください」領主の館というのか、明らかにまわりの建物とは違う豪華なお屋敷に入り、領主が待つという大部屋の前に僕らは立っている。「き、緊張してきましたよアレンさん……」「ここの領主は凄く気さくな人だから心配しなくていいよ」そう言ってくれるが、領主なんて偉い人と会うなんて緊張しない訳がない。封建制度がこの世界では普通であり、僕らの世界と大きく違う。ここの領主は伯爵だそうだが、伯爵なんて上から3番目に偉い人じゃなかったか?公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵……の順番だったはず。扉が開くと、部屋の真ん中に突っ立っている男性。イケてるおじさんって風貌だが、顔はとても笑顔だ。「アレン様、ご無沙汰しておりました。またお会い出来るとは……光栄でございます」「色々あってね。それより久しぶりだねロアン伯爵」「最後にお会いしたのは8年前……ご存命だとは思っておりませんでした……」ロアン伯爵の目尻

    Huling Na-update : 2025-03-23
  • もしもあの日に戻れたのなら   異世界アルカディア⑤

    僕との会話が終わるとロアン伯爵はすぐにアレンさんへと振り向き、話の続きをしはじめた。「それで……アレン様は8年前魔神討伐に出て行方不明となっていたのに、なぜ今になって戻ってこられたのですか?」「あー実はあの魔神討伐の旅で、魔神まで辿り着いたんだ。ただその時にしくじってね……」アレンさんは今までの事を話しだした。ロアン伯爵は頷きを交えつつ、時折驚きながらも聞き入っていた。「……なるほど。そんなことがあったとは……。黄金の旅団が来られたと聞いたとき、部下から人数が少ないと言われましたので何かあったのだろうとは思っていましたが……」「まあ、団員は減ってしまったね。でもボクらは常に死と隣り合わせなんだ。仲間が死んでいく事は日常だよ」「ご冥福をお祈りいたします……それで、いつまでここに滞在されますか?部屋は用意させて頂きますので」「いやここには一日だけ滞在する予定なんだ。ただ馬車を借りたい。一日でも早く帝都に行かないと行けないしね」「そういうことであれば、最高の馬車をご用意させて頂きます」ロアン伯爵の屋敷の数部屋をお借りする事となり、僕はアカリと同じ部屋を与えられた。何もかもが日本とは違い、終始落ち着かなかったがやっと落ち着ける時間となった。「カナタ、どう?この世界は」「悪くないよ。ただやっぱり日本の便利さを経験してるから、色々と不便に思うことが多いな」「カナタの世界は魔法がない代わりに科学が発展しすぎ」ファンタジーな世界に最初はワクワクしたが、実際に住むとなると不便さが気になってくる。例えば、トイレは自動洗浄なんてものはないし電車も車もない。連絡手段は伝書鳩か魔法での念話のみ。文明レベルは中世といったところか。しかし、僕のいた世界にはない、魔法が発展している。コンロとか暖房器具は火魔法を主体とした魔法具と呼ばれる道具があ

    Huling Na-update : 2025-03-24
  • もしもあの日に戻れたのなら   異世界アルカディア⑥

    「そんなことより、その赤眼を何とかした方がいい。伯爵に眼帯でも用意させるから待ってて」「伯爵にそんなこと頼んでもいいのか?」「いいよ、あの伯爵はかなり変わってる人だから」変わってる?別に普通に気さくなおじさん、って雰囲気だったが。「ここ、城塞都市ハビリスは一番魔族領に近い。だからカナタのその赤眼についても何も言ってこなかった。色んな人が出入りする都市だから」本来なら僕の赤眼は何処に行っても奇異な目で見られるし、レーザーライフルも珍しく、目につくらしいがロアン伯爵は様々な人と触れ合う機会が多く、僕にも何も言ってこなかったそうだ。慣れてしまっているのだろう、風変わりな者たちを見るのが。 ロアン伯爵に用意してもらった黒い眼帯を着ける。鏡の前で自分を見ると、似合わなすぎて笑ってしまった。「カッコよくなった」アカリに褒められると少し照れる。今まで眼帯なんて着けたことなかったから違和感しかない。見ようによってはかの有名な武将に見えなくもない。 少しすると、ドアがノックされた。「カナタくん、いるかい?」アレンさんが来たようだ。返事をすると、部屋に入ってくる。「いいね、眼帯よく似合ってるよ」「ありがとうございます。でも距離感が掴みにくいですね」「まあ慣れるまでは仕方ない。それで、馬車の準備は出来たから明日には出発するよ。それまではゆっくりしていて」それだけ伝えるとまた部屋を出て行った。「アカリは外に出なくていいのか?」「うん。カナタと一緒にいる」久しぶりにこの世界を見て回れるというのに、部屋にいるらしい。アカリは元の世界に居たときより、よく喋るようになった。理由を聞くと恥ずかしそうに答えてくれた。どうやら自分の世界に僕がいることが、嬉しいらしい。この世界の事は私が教える、と胸を張ってドヤ顔を見せる。可愛いやつだ。年相応な振る舞いをしてくれると僕も嬉しく

    Huling Na-update : 2025-03-25
  • もしもあの日に戻れたのなら   異世界アルカディア⑦

    「それにしてもこんな物まで貰ってよかったんだろうか」実はレーザーライフルを隠す為に、亜空間袋と呼ばれる物を入れておく袋を貰ったのだが、それがなかなかに凄い。中は亜空間魔法により拡張されているようで、一人暮らしのワンルーム程度の容量がある。物を取り出すときも、それを思い浮かべながら手を突っ込むと取り出せる。科学では説明がつかない、流石魔法具といったところか。「いいと思う。それ亜空間袋の中で一番小さい容量だし安い」これで一番小さいだと?「一番大きい容量の物だと、山すら入るから」「異世界アルカディア……凄まじいな……」アカリと何気ない会話をしつつ、夜はふけていった。――――――朝起きて朝食をすませた後外に出た。僕の目の前には、巨大な馬車が用意されている。バスほどの大きさがあるだろうか?10人乗っても余裕があるというでかさ。伯爵が用意してくれた馬車は、小さいバスくらいはある大きなもの。馬も見たことがないほどの大きさだ。少しファンタジックな馬だな、角は生えてるし眼つきがそれはもう恐ろしい。「さあ、みんな乗り込んで」アレンさんに促され団員達はゾロゾロと馬車に乗り込んでいく。僕は呆けて馬車を眺めていると後ろから声が掛けられた。「カナタくんだったかな?」振り返るとロアン伯爵が立っていた。「はい、どうしましたか?」「いやなに、君の境遇はアレン様から聞かせて貰ったよ。この世界を代表してお礼を言わせてほしい。無事に連れ帰ってくれてありがとう」ロアン伯爵は90度のお辞儀をし僕に礼をしてきた。「いえ頭を上げてください!全員で帰ってこられればよかったのですが、半分以上も僕の為に亡くなってしまって……」「君が責任を感じることはない。彼らは皆冒険者。守りたい者を守りきって命を落とすのは誇れる事なんだ」

    Huling Na-update : 2025-03-26
  • もしもあの日に戻れたのなら   異世界アルカディア⑧

    馬車に乗り、窓の外を流れていく景色は街の風景から次第に草原へと変わる。街の外に出ると、途端にど田舎の風景になるのは、この世界ならではだろう。窓の外を見ていると、アレンさんから話しかけられた。「さっきロアン伯爵と何か話していたようだけど、何かあったのかい?」「この眼帯が御礼の品だと言われました。それと魔導具だとも」「あ!そうだった!!ロアン伯爵から伝えられていたんだった、ごめんごめん」アレンさんは苦笑いしながら、眼帯の説明をしてくれた。この眼帯に魔力を流すと自分の目のように視界を得ることが出来る代物だそうだ。もちろんそんな魔導具は珍しい物で、この世界では金貨100枚はするらしい。そういえば、昨日アカリに教えてもらっていた。銅貨1枚が1000円、銀貨1枚が1万円、金貨1枚が10万円、白金貨1枚が100万円と同等の価値があると言っていたな。なら、この眼帯は1000万円の物なのか。お、恐ろしい……僕の目に着いている装着物が1000万円……歩く宝石じゃないか……それともう1つ貰った物。亜空間袋だ。これも最低容量とは聞いたが、そもそも亜空間袋自体金貨数枚はする代物だそうだ。そんなものをポンっとくれる伯爵の懐の広さに感謝しかない。暫く流れていく風景を見ていると、遠くの方に人工物が見えてきた。「あ、カナタくん!もうすぐ着くよ!」「あれが……この国の中心部……」近づくにつれて、城塞都市ハビリスの数倍はあると思われる巨大な壁が見えてくる。帝都エリュシオン。エリュシオン帝国の心臓部。立派な城壁に囲まれた敷地面積はおよそ東京二つ分の大きさらしい。人口2000万人がひしめく箱庭だ。門を抜け中央の皇帝陛下のいる城へ向かっている

    Huling Na-update : 2025-03-27
  • もしもあの日に戻れたのなら   異世界アルカディア⑨

    馬車を降りると、辺りは豪華で綺麗な雰囲気になっている。 噴水や光り輝くオブジェが高級感を感じさせる。 衛兵がそこかしこに待機しており、メイドや執事もチラホラと見える。 初めての光景にキョロキョロと視線を泳がせていると、一人の執事の恰好をした男が近づいてきた。 既にハビリス伯爵から伝書鳩が飛んでいたのだろう。 驚愕することなくアレンさんへと話しかけてきた。「お久しぶりでございます、アレン様」 「あ!久しぶりだなぁ元気にしてたかい?ガラン爺」 「それはこちらの台詞で御座いますよ。貴方がたが消えてから8年も経っていますから」 優しそうな微笑みを浮かべる執事はガラン爺と呼ばれているらしい。 肉弾戦なら無類の強さを誇る為、武器を持ち込むことが出来ない謁見の間での護衛を兼ねているそうだ。「では皆様、積もる話もありますでしょうが、こちらに武器を預けて頂き私に着いてきて下さい」 各々、武器を預かり棚に置きガラン爺に着いていく。 豪華絢爛という言葉が似合いそうな装飾が施されたどでかい扉の前で僕ら一同は立ち止まる。「ここから先は謁見の間でございます。アレン様は何度も足を運んで頂いておりますが他の方は初めてが多いでしょう。皇帝陛下は気さくなお方です。あまり固くならないように」僕もそんな国のトップなんて会ったこともなく、緊張で顔が強張っているのだろうか。 そんなことより謁見のマナーなんて簡単にしか教えて貰っていないのだが大丈夫なのか……ゆっくりと扉が開く。 全員同時に足を踏み入れる。 アレンさんだけは慣れているのか、1人スタスタと笑顔で入っていく。 レイさんからすれば冷や汗ものだろう。皇帝陛下から一定の距離で全員立ち止まる。 「余が」 「オルランドー!久しぶりだなぁ!あれ、老けた?」 あろうことかアレンさんは皇帝陛下の言葉を遮り手を挙げ声をかけた。周りがザワつく、かと思えば皆笑顔だ。 不思議に思

    Huling Na-update : 2025-03-27

Pinakabagong kabanata

  • もしもあの日に戻れたのなら   宿り木の仲間達④

    ダンジョンの攻略は冒険者の仕事だ。稀に出てくる宝石や価値の高い魔導具などが彼らの生活を支えている。当然収穫のない日もあるそうで、そんな日はツいていなかったとヤケ酒を煽るそうだ。「セル達がお金を稼いでくれる間にボクらはある人の所に行こうか」「ある人というのは?」「着いてからのお楽しみさ」アレンさんはそう言って不敵に笑う。誰かを紹介してくれるみたいだが一体どんな人なのだろうか。僕とアカリはアレンさんに連れられ宿り木から出ようとすると、レオンハルトさんがガチガチに装備を固め立っていた。「お待たせレオンハルト。さて、行こうか」「ふぅ……気が重いが、仕方ない」レオンハルトさんは陰鬱な表情で嫌そうに顔を背けた。これから会う人というのは誰なんだ。剣聖がそこまで装備を固め、嫌がる人物とは一体……。「カナタは心配しなくていい」「いや、そうは言われてもな……」剣聖の顔が強張っているんだぞ。会うなり剣をぶん回すような人だったらどうしようか。街を練り歩く事十分。ある大きな屋敷の前に到着するとアレンさんが門番に向かって手を挙げた。「やあ、彼女はいるかな?」「え?アレン様?は、はいおりますが……」「じゃあ入れて貰えるかな?」「も、もちろんです!……それよりもアレン様は死んだと噂が」「ああ、噂は所詮噂ってやつさ」門番は驚いた顔でアレンさんをまじまじと見つめていた。それを当人は適当に躱し、敷地内へと入った。僕な

  • もしもあの日に戻れたのなら   宿り木の仲間達③

    朝は小鳥のさえずりで目を覚ました。 とても気持ちのいい寝起きに僕は伸びをする。 久しぶりにゆっくりと眠れた気がするな。一階に降りると既に何人かの旅団員が席について朝食を摂っていた。「おはようカナタ」 「おはようございますアレンさん」 僕はその中でアレンさんを見つけると彼と同じテーブルについた。ここ宿り木では食事処も完備されていて毎日朝昼晩と望めばタダで食事ができるよう料理人を雇っているそうだ。僕が席に着くとウェイターの一人が僕の所に朝食を持ってくる。 美味しそうな匂いにお腹が鳴った。「今日は忙しいからね。よく食べて体力をつけておいた方が良い」 「はい、そうします」 朝食はパンと目玉焼きにスープがついている。 とても食欲をそそる匂いだ。僕はパンを一口頬張ると、あまりの美味しさに二口三口と立て続けにパンに齧りついてしまった。「ハハッどうだい?ここの食事はなかなかのものだろう?」 「はい!美味しすぎます!」 日本の食事も当然美味しいが異世界の食事も捨てたもんじゃない。 いや、これならもしかするとこっちの世界の食事の方が美味しい説が出てきたぞ。僕が朝食を採っているとフェリスさんも起きたようで二階から降りてきた。「おはよー……」 「相変わらず寝起きが悪いねフェリス」 初めて見たフェリスさんの姿に僕も驚いた。 いつもは綺麗な格好で髪も整え服もしっかり着こなしていたが、今はパジャマなのかダルっとした着こなしになっていた。「あー……フェリス、カナタ君もいるよ?」 「え?」 アレンさんが僕の名前を口にするとフェリスさんは固まった。 しばらくして顔が赤くなり走って二階へと戻って行った。 人様に見せるような恰好ではないと恥ずかしくなったのだろうか。「いやぁカナタも罪な男だ」 「え?」 「ああ、いや気にしないで。こっちの話さ」 何の話だろうか。 まあ気にしないでというのなら気にしないけど。

  • もしもあの日に戻れたのなら   宿り木の仲間達②

    宴会も終わりに近づくと酔い潰れたのか何人かがグッタリと机に突っ伏していた。「貴方がカナタさんですね?私はリリー・アイズと申します」見慣れない人が近付いてくると挨拶をしてきた。白い髪で目つきは鋭くレイさんを彷彿とさせる女性だった。「えっと……初めましてカナタです」「私はあそこで酔い潰れているバカと同じクラン、"破滅の灯火"の副団長をしています」リリーさんはセルさんを指差しそう言う。副団長って肩書きがつく人はみんなクールな女性なのだろうか。リリーさんも知的な雰囲気が漂っていて、とても美しい女性だ。「改めて感謝を。アレン団長は人類にとって失うわけにいかない人材でした。この世界では王と名のつく二つ名を持つ冒険者はたったの三人しかいません。殲滅王アレン、不敗の王テスタロッサ、魔導王クロウリー。魔神の軍勢に対抗できるのは彼らの力あってこそ。だから改めてお礼を申し上げます」「何度も言いますが僕だけの力ではありません。日本でも協力者がいたからこそ異世界ゲートは完成させる事ができました」「そうでしたか……ではその方々にも感謝申し上げます」リリーさんは何度も頭を下げていた。そこまで畏まられても対応に困ってしまう。そんな僕の様子を見てたのかアカリがスッと寄ってきた。「リリー、カナタは疲れてるからもう休ませてもいい?」「ああ、すみませんでした。お時間を取らせてしまって」どうやらアカリはそろそろ部屋に戻ってもいいと気遣ってくれたようだ。「いえいえ。またこの世界ではお世話になることもあると思いますのでその際はよろしくお願いします」「もちろんです。我々"破滅の灯火"は貴方の力になると誓いましょう」リリーさんとの会話を終えるとアカ

  • もしもあの日に戻れたのなら   宿り木の仲間達①

    「おい!アレン!!お前らが帰ってきたお祝いも兼ねて皆で騒ごうぜ?」いきなり大きな声が聞こえたせいで皆の視線はそちらに向く。大柄で背丈を超える巨大な剣を担いだその男は、ズンズンとこちらに向かって歩いてきた。見たことがない顔だがアレンさん達の知り合いだろうか?「久しぶりだね、セル。それに僕がいない間宿り木の管理をしてくれてありがとう」「おう!!お前がいなくなってからは俺が一時的にここの管理者やってたからな!!!」黄金の旅団の精鋭が魔神討伐の旅に出た後は、ここ宿り木のトップを任せていた方らしい。「見たことねぇ顔だが、あんた誰だ?」そんなセルと呼ばれた男が僕のほうを見下ろしてくる。威圧感が半端じゃないが、今まで魔物を見てきた僕はここで気おくれはしない。「初めまして、城ケ崎彼方です」「彼のことはご飯を食べながら話すよ、とにかく座って」「おお、俺も腹が減ってたしな」アレンさんにそう促され、自己紹介もそこそこにみな席に着いた。「じゃあ気を取り直して」カンパーイ!!各々近くにいた人とカップを打ち付ける音が聞こえてくる。僕も手が届く範囲で乾杯し、果実酒を口に運ぶ。日本で飲んだことがある果実酒より、果物の風味が強く口触りはとても良い。「それで8年も何処にいたんだアレン」セルと呼ばれた男は気になって仕方がないのだろう。食べるのもそこそこにアレンさんへと話しかける。 「魔神討伐の旅に出た後――」アレンさんは今まであった事を細かく話していた。聞いているセルさんは黙って頷き、時には怒り、悲しんだりして表情豊かだった。「なるほどな&h

  • もしもあの日に戻れたのなら   異世界アルカディア⑩

    声が震えていたのがおかしかったのかアレンさんは横で笑っている。「フフッ、そんなに畏まらなくても良い。余は皇帝であるが1人の人間でもある。アレンは余の友人であり恩人でもある。そんな彼を救ってくれた君には感謝しかない」 「あ、ありがとうございます」 「それで君のその眼帯はもしかして隠す為の物かな?」 「えっと……」皇帝の勘は鋭いようだ。 すぐに僕の赤眼に気づいたらしい。 禁忌を侵した者は国に置いてはおけない、なんて言われるのだろうか。「ふっ、そこまで気張らなくていい。おおよその事は想像できている。彼らの為に禁忌を侵したのだろう?」 「その、僕の無知が招いた結果です……」 「彼らに変わって余からも礼をさせてほしい」 「もうアレンさんからもお礼はしていただきました!なので大丈夫です!!」 「余からの礼を断ることも無礼に当たるのだよ。何も言わず受け取るといい」 「ありがとうございます……」 受け取った袋はかなりの重さがある。 恐らく金貨がたくさん入っているのだろう。「それとカナタ、この国にいる間君は何処に滞在するか決めているのか?」 「いえ、まだ何も……」 「あーそれは心配しなくていいよ、ボクらの宿り木に来たらいいからね」 「ふむ……それなら安心か。この世界の常識を知らずに彷徨くのは流石に危険だからな」 「ああ、その当たりも説明しておくよオルランド」皇帝はわざわざ僕の為に滞在場所を提供するつもりだったそうだが、気が知れた仲間と共にいるほうが気楽だろうとのことで 僕らは城を後にし、宿り木へと向かった。「カナタ、これからはカナタって呼ばせてもらうよ、いちいち君付けするのも面倒だしね」 「構いませんよ、そっちのほうが戦闘時だと素早く指示を受けられますし」 アレンさんから呼び捨てにされると、黄金の旅団員として認められた気がして嬉しかった。宿り木の一室を与えられ荷物を置き僕は食堂へと向かう。

  • もしもあの日に戻れたのなら   異世界アルカディア⑨

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  • もしもあの日に戻れたのなら   異世界アルカディア⑧

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  • もしもあの日に戻れたのなら   異世界アルカディア⑦

    「それにしてもこんな物まで貰ってよかったんだろうか」実はレーザーライフルを隠す為に、亜空間袋と呼ばれる物を入れておく袋を貰ったのだが、それがなかなかに凄い。中は亜空間魔法により拡張されているようで、一人暮らしのワンルーム程度の容量がある。物を取り出すときも、それを思い浮かべながら手を突っ込むと取り出せる。科学では説明がつかない、流石魔法具といったところか。「いいと思う。それ亜空間袋の中で一番小さい容量だし安い」これで一番小さいだと?「一番大きい容量の物だと、山すら入るから」「異世界アルカディア……凄まじいな……」アカリと何気ない会話をしつつ、夜はふけていった。――――――朝起きて朝食をすませた後外に出た。僕の目の前には、巨大な馬車が用意されている。バスほどの大きさがあるだろうか?10人乗っても余裕があるというでかさ。伯爵が用意してくれた馬車は、小さいバスくらいはある大きなもの。馬も見たことがないほどの大きさだ。少しファンタジックな馬だな、角は生えてるし眼つきがそれはもう恐ろしい。「さあ、みんな乗り込んで」アレンさんに促され団員達はゾロゾロと馬車に乗り込んでいく。僕は呆けて馬車を眺めていると後ろから声が掛けられた。「カナタくんだったかな?」振り返るとロアン伯爵が立っていた。「はい、どうしましたか?」「いやなに、君の境遇はアレン様から聞かせて貰ったよ。この世界を代表してお礼を言わせてほしい。無事に連れ帰ってくれてありがとう」ロアン伯爵は90度のお辞儀をし僕に礼をしてきた。「いえ頭を上げてください!全員で帰ってこられればよかったのですが、半分以上も僕の為に亡くなってしまって……」「君が責任を感じることはない。彼らは皆冒険者。守りたい者を守りきって命を落とすのは誇れる事なんだ」

  • もしもあの日に戻れたのなら   異世界アルカディア⑥

    「そんなことより、その赤眼を何とかした方がいい。伯爵に眼帯でも用意させるから待ってて」「伯爵にそんなこと頼んでもいいのか?」「いいよ、あの伯爵はかなり変わってる人だから」変わってる?別に普通に気さくなおじさん、って雰囲気だったが。「ここ、城塞都市ハビリスは一番魔族領に近い。だからカナタのその赤眼についても何も言ってこなかった。色んな人が出入りする都市だから」本来なら僕の赤眼は何処に行っても奇異な目で見られるし、レーザーライフルも珍しく、目につくらしいがロアン伯爵は様々な人と触れ合う機会が多く、僕にも何も言ってこなかったそうだ。慣れてしまっているのだろう、風変わりな者たちを見るのが。 ロアン伯爵に用意してもらった黒い眼帯を着ける。鏡の前で自分を見ると、似合わなすぎて笑ってしまった。「カッコよくなった」アカリに褒められると少し照れる。今まで眼帯なんて着けたことなかったから違和感しかない。見ようによってはかの有名な武将に見えなくもない。 少しすると、ドアがノックされた。「カナタくん、いるかい?」アレンさんが来たようだ。返事をすると、部屋に入ってくる。「いいね、眼帯よく似合ってるよ」「ありがとうございます。でも距離感が掴みにくいですね」「まあ慣れるまでは仕方ない。それで、馬車の準備は出来たから明日には出発するよ。それまではゆっくりしていて」それだけ伝えるとまた部屋を出て行った。「アカリは外に出なくていいのか?」「うん。カナタと一緒にいる」久しぶりにこの世界を見て回れるというのに、部屋にいるらしい。アカリは元の世界に居たときより、よく喋るようになった。理由を聞くと恥ずかしそうに答えてくれた。どうやら自分の世界に僕がいることが、嬉しいらしい。この世界の事は私が教える、と胸を張ってドヤ顔を見せる。可愛いやつだ。年相応な振る舞いをしてくれると僕も嬉しく

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