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第6話

周りの人たちはすでに晴美に背を向け、誰も彼女に味方しなかった。その視線には非難が込められていて、彼女はまるで針のむしろに座っているようだった。

かつて彼女が私に浴びせた人々の嘲りが、今はすべて彼女自身に向かって返ってきたのだ。

「し、栞......」

晴美は震える手で私を指差し、叫んだ。「君は母親がこんなに侮辱されるのを見ているだけなのか?」

「子供をダシに使うのはやめてくれない?」

真弓は私を背後にかばった。

私よりも小柄なのに、彼女はとても大きく見えた。

真弓は、破壊された絵に一瞥をくれ、画廊の警備員に向かって言った。「警察を呼んで証拠を押さえましょう。彼女は故意に他人の財産を破壊しました。訴えます!」

警察に通報するという言葉を聞いた瞬間、晴美は動揺した。

「あんた......私は栞の実の母親だよ?それでも私を警察に突き出すつもりか?」

真弓は毅然とした態度で答えた。「ええ、法律を犯せば、責任を取るのは当然でしょう?」

「十津川栞!何か言いなさい!お母さんを刑務所に送るつもりなの?」

私はしばらく黙り込んで、真弓の背後から一歩前に出た。

晴美を見つめる私の目には、もう何の感情も浮かんでいなかった。

「私は今まで二十年以上、お母さんの操り人形だった。でも、これからは自分の人生を生きたい」

私は真弓が警察に通報するのを止めなかった。

だが実際には、警備員が110番に電話する前に、晴美は人ごみをかき分けて逃げ出してしまった。

真弓は彼女を追わず、警備員にも通報を止めさせた。

彼女は私の手を引き、集まった客たちに向かって言った。「皆さん、本日はご迷惑をおかけしてしまい、大変申し訳ありませんでした。娘に代わって、お詫び申し上げます」

そう言って、彼女は深々とお辞儀をした。

客たちは口々に言った。

「十津川さんのせいじゃないよ」

「そうそう、私たちも事情をよく知らずに、すみません......」

真弓はその場をうまく収め、客たちを見送ると、警備員に指示して現場を片付け、監視カメラの映像を証拠として保管させた。

その後、彼女は私を病院に連れて行った。

傷の処置をしている間、真弓は私以上に緊張していて、私の目を隠しながら「大丈夫、大丈夫」と何度も優しくなだめてくれた。

その姿に、医者も思わず笑ってしまった。

「お母さん、ちょ
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