解けぬ想い、春の終焉
「美桜、昔、君のために婚約を決めたんだけど、もうそろそろ病気も治る頃だし、京市に戻って結婚してくれる?」
「もしそれでも嫌なら、お父さんと話をして、婚約を解消するわ」
薄暗い部屋の中、星川美桜には沈黙だけが聞こえていた。
電話の向こう側が、今回も彼女を説得できないだろうと思ったその時、彼女は突然口を開いた。「結婚、する」
電話の向こうの星川の母は、驚き固まったように「え、同意したの?」と尋ねた。
星川美桜は落ち着いた声で言った。「ええ。でも、こちらのことを少し片付ける時間が必要だから、2週間以内には戻るわ。お母さん、先に結婚式の準備を進めてね」
そう言うと、彼女はさらにいくつか言葉を付け加えてから、電話を切った。