遺産の棘
赤ちゃんに授乳を終え、私は目を閉じて少し休んでいた。
その時、家政婦が私が寝ていると思ったのか、遠慮なく夫に甘える声が聞こえてきた。
「翔太さん、もし奥さんが、自分が産んだ息子がもうどこかへやられて、今抱いている娘が私たちの子だって知ったら、どうなるんでしょうね?」
「玲子は本当に賢いな。病院で子どもを入れ替えたのは最高の手だよ。このままうちの娘があいつの財産を全部継げば、あいつを追い出すのも簡単だ!」
私はその話を聞かなかったふりをした。
娘に対しては、変わらず心を込めて育てていくと決めた。
娘が成長し、学業を終えて帰国すると、私は名義すべての株式を娘に譲渡し、彼女がグループの最年少の後継者になれるように全力で支援した。
そのお祝いの宴会で、家政婦は私よりも派手なドレスで現れ、堂々と娘の手を取りこう言った。
「園子ちゃん、私こそがあなたの本当のお母さんなのよ!あの人があなたを奪ったの。今こそ本当の母親が誰かを知るときよ!」
夫は離婚届を差し出しながら言った。
「園子のために、きれいに別れよう」
娘は家政婦と腕を組み、冷たく私を見つめた。
「18年間育ててくれたお礼に、これからは年に一回だけ老人ホームに顔を出してあげるわ」
彼らが満足そうに笑うのを見て、私は目を伏せた。
「あなたたちの望み通りにね」
その「思わぬ富」を受け止められるかしら――
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