類は朝早く目を覚ましたとき、ひとつの朗報を耳にした。結弦の結婚式の招待状が手に入ったのだ。類は純金で作られ、中にはサファイアが一粒埋め込まれた招待状を眺めながら言った。「こんなにあっさり招待状が手に入るとはね。赤間家って外で言われてるほど神秘的でもないな」「それにしても奇妙なのは、招待状に新郎の名前しか載ってなくて、新婦の名前がどこにも書かれていないことだ」もっとも、誰が新婦かなんて彼にとってはどうでもよかった。どうせどこかの名家の令嬢に違いない。彼は振り返ってアシスタントに聞いた。「準備は整ったか?」アシスタントは黙ってうなずいた。かつて、遥は夏目家の両親の激しい反対を押し切って、婚約を解消し、類と結婚した。彼女には類以外、頼れる相手がもうこの世にいなかった。もし仮に「後始末」を引き受ける可能性のある人間がいるとすれば、それは結弦しかいない。「フン、海原の王子様の結婚式なんて、マスコミが黙ってるはずがない。スキャンダルが暴かれれば、あいつももう堂々と彼女にすり寄る顔なんてないだろう」「そうなれば、身寄りのない遥は、俺にすがるしかない」類はほくそ笑んだ。彼はさらに命じる。「今日のオークションで、奥様が好きだったピンクダイヤのセットを競り落とせ。再会の贈り物にする」だがアシスタントは動かなかった。類は眉をひそめた。「どうした」「社長、お金が足りません」「俺の株を20%売って現金化しろ、応急措置だ」アシスタントはため息をつき、そっと忠告する。「株を売ったら、社長は片平グループの筆頭株主じゃなくなります。もしそうなったら......」「遥を取り戻してから買い戻せばいい話だ」類は、取り合わずに手を振った。その株式は市場に出るや否や、すぐに安値で買い取られた。その背後にいたのは、他でもない結弦だった。その後も類は浪費のために株を売り続け、やがて彼の手元にはたった5%しか残らなくなった。片平グループの筆頭株主だった男は、今やいつでも取締役会から追い出される小さな株主にまで落ちぶれた。出発の二日前、里帆が逃げた。地下室の扉は外からこじ開けられ、彼女は助け出されたのだ。類は激怒し、警備を怒鳴りつけた。「何日も飯食ってないやつが、どうやって逃げ出したと
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