「今から言うことは誰にも言わないでもらえます?」 「わかった」 「絶対に秘密ですよ?」 「もちろん」 本当は私がただ恥ずかしいだけで、別に今さらほかの誰かに知られたとしてもどうってことのない内容なのだけれど。 だけど大げさに“秘密”だと冗談を言う私に、宮田さんがうなずきながらイタズラっぽく微笑む。「これで僕たち、お互いの秘密を共有しあう仲になるんだね」 一応そうなりますかね。あなたのほうは本当に誰にも言えない秘密ですけど。 何故か意味深に言う宮田さんがおかしくて、思わずクスっと笑いがこみ上げた。「私が高校三年生のときの話なんですけどね。たまたま通りかかったチャペルで、モデルさんが撮影してたんですよ」 「撮影?」 「はい。今思えば、ウエディング専門誌とか、そういうのだと思うんですけど。真っ白なウエディングドレスを着た綺麗な女の人と、かっこいいタキシードを着た綺麗な男の人がいました。周りには機材がたくさんあって、カメラマンやスタッフもいて、すぐに撮影だってわかったから、私はヤジウマで遠くからそれを見ていたんです」 見ていた……というより、見入っていたんだ。 その場から離れられなくて、釘付けになった。「男性のモデルさんがすっごく素敵で、イケメンで、かっこいいなぁーって思っちゃって。でも、あとでどの雑誌を探しても、そのモデルさんを見かけることはありませんでした。だけどもしかしたら……私もこの業界に就職すれば、また会えるかもしれないって内心そう思ったのは事実です」 動機、不純でしょ? と笑ってそう言えば、宮田さんが苦笑いを浮かべる。 本当に不純な動機だ。 そのモデルの彼に近づけるのなら、職種は何でも良かったのか?と、当時の自分に突っ込みたいくらい。 だけど実際にブライダル業界に就職してみたら、仕事は思っていた以上に楽しい。 今は当初の動機を忘れちゃうくらい。「そのモデルの名前は?」 「さぁ? わかりません。年齢は若かったと思いますけど、もちろん私よりも年上でしょうね」 「もしかして、まったくなにも知らないの?」 驚きの声をあげる宮田さんに、私はゆっくりとうなずく。「あの時たまたまモデルをやっただけで、元々モデルとしての活動をしていなかったのかもしれませんし、今となっては探す手段もありません」 「そっか」 「とい
Last Updated : 2025-04-03 Read more