写真の端には、ぽつんと立つ早絵の姿が映り込んでいた。すべてを見届けていたのだ。それは瑞樹の最後の希望を、容赦なく踏み潰した。彼女の目の前で起きたことを、今さらどうやって言い逃れできるっていうんだ。自分の嘘は完璧に隠せていると思っていた。千鶴に心を動かしたことなんて一度もなかった。あのとき彼女を選んだのも、ただ早絵に似ていたからだ。ここ最近、無意識に見過ごしていた違和感の数々が、頭の中で次々に浮かび上がってきた。早絵が千鶴との関係に気づいたのは、加瀬家での食事の日だったのか、それともそれより前だったのか?気づいてから今日まで、どれだけ苦しい思いをしてきたんだ。あれほど愛していたのに。絶対に悲しませないって、あんなに誓ったのに。一体いつから、こんなふうに変わってしまった?目元が赤く染まり、視界が滲んでいく。早絵との最初の子どもは、七ヶ月で心音が止まり、中絶するしかなかった。理由はわかっている。瑞樹母が送ってきた安胎薬のせいだ。早絵は最初、飲むのを嫌がっていた。それを自分が、母さんのためだと言い聞かせて、無理に飲ませたのだった。子どもを失って、早絵は生きる気力すら失った。でも、間違いを認める勇気が持てなかった。早絵に責められるのが怖かった。そのあと四年間、早絵は六回も体外受精に挑戦した。そのたびに、瑞樹の罪悪感は深くなり、心は押し潰されていった。家の中に充満する薬の匂いに、どんどん息苦しさを感じるようになっていた。瑞樹母の繰り返される言葉に、いつしか心のどこかで卑怯な考えが芽生えていた。子どもさえできれば、すべてうまくいく。だから、母が千鶴を連れてきたとき、何も考えずに受け入れてしまった。千鶴の中に、若い頃の早絵の生き生きとした姿を重ねた。罪悪感を忘れさせてくれるその存在に、溺れてしまった。早絵がまた体外受精に失敗したら、そのときこそ養子を迎えようと提案するつもりだった。千鶴との子どもを養子として連れ帰り、欠けたものを埋めようとしていた。でも、気づかれていなかったからといって、起きていないことにはならない。十三歳で弟を育て上げた早絵が、耐えて耐えて、何も言わないような女であるはずがなかった。隠し事なんて、いつかは燃え広がる。早絵が離れていくのは、遅かれ早かれ決まっていた
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