「そうか」少しだけ考えるような表情をした崎本が、何か言いかけたところで会社に到着し、この話はそこで終わった。「長谷川、無理をするなよ」それだけを言い残し、崎本は自分のフロアへ向かうべく歩いていった。ほっとしたのも束の間、今から壮一と顔を合わせなければならないという現実は変わらない。なんとか気持ちを立て直し、日葵はフロアの自動ドアにIDをかざした。「おはようございます」個々のブースになっているため、誰がいるのかわからなかったが、とりあえず声をかけると、すぐに「おはよう」と返事が返ってくる。「調子はどう? 大丈夫?」柔らかな笑みを浮かべた村瀬に、日葵はすぐに頭を下げた。「昨日は申し訳ありませんでした」「いや、こっちこそ。あの後、打ち合わせが長引いて会えなかったから、仕事を押しつけてしまって悪かったな」ヘッドフォンを外してこちらを向いた村瀬に、日葵は首を横に振る。「いえ、本当にご迷惑をおかけしました」「今日も無理するなよ。これからもっと忙しくなるから」村瀬の言葉に、日葵もカレンダーに目を向ける。「はい。でも、声優さんたちの日程やイベントの手配も山積みなので……」その言葉に、村瀬は申し訳なさそうに顔をゆがめた。「悪いな。そうだよな、長谷川さんに頼りっぱなしだもんな……。おい、壮一!」フロアの奥にある仮眠室兼打ち合わせルームの扉が開き、壮一が出てきた。冷静を装うものの、日葵の心が大きく波打つ。「なんだ?」壮一は、そんな日葵を気にする様子もなく、完全に仕事モードの表情で村瀬を見る。「チーフとしての初仕事。もう一人アシスタントを入れろよ。このままじゃ、長谷川さんがいつ倒れるかわからない」村瀬の言葉に、壮一の視線が日葵へと向けられた。「長谷川。そうなのか?」初めて見る上司の顔に、日葵は呆然としながら壮一を見た。「長谷川、どうなんだ?」「いえ、あの……」言い淀んだ日葵に、壮一は小さくため息をつくと、淡々と言葉を投げた。「自分の今の仕事を持って、俺の部屋へ」有無を言わせない指示に、日葵は小さく返事を返した。壮一のデスクの前で、日葵はじっと立っていた。進行状況や仕事の内容を説明した後、壮一は日葵の資料とスケジュールを確認していた。「……なんだこれは」しばらくして発せられた言葉に、日葵はビクッとする。「社長も急いだな
ปรับปรุงล่าสุด : 2025-03-12 อ่านเพิ่มเติม