「ふん!」梅原グループの古株の重役たちは袖を払うように立ち去りながら、捨て台詞を残した。「この件は必ず清算させてもらう!」東彦の顔からは血の気が引き、朝倉の両親もため息をつくばかり。実のところ、彼らは息子の本性を知っていた。部屋に入った瞬間、謙人と奏音の怪しげな様子を目にして、すべてを察したのだ。とはいえ、奏音は所詮梅原家の傍系の娘。芽依とは格が違う。今は芽依の機嫌を取ることが先決だった......両親の視線を受け取った謙人は、慌てて芽依に近寄った。「芽依、信じてくれ。昨夜は何も......」芽依は謙人の手を払いのけ、涙を流しながら立ち去ろうとする。謙人の母が慌てて彼女の腕を掴んだ。「まあ待って、これから婚約式があるのよ。行かないで」「おばさま、謙人さんは私を裏切っておいて、まともな説明すらしない。このまま強引に結婚させる気なんですか?」芽依の凛とした眼差しに、謙人の母は手を放すしかなかった。すると今度は謙人の母が激情に駆られ、東彦に向かって叫んだ。「全て奏音さんが仕組んだことでしょう!うちの家に入り込もうと策略を巡らせて!でも、絶対に許しませんからね!」「何を言い掛かりつけてるの!誰が策略なんて!はっきり言いなさいよ!」芳子が娘を庇って飛び出してきた。「誰って?上が腐れば下も腐るってことよ!」両家の醜い言い争いの隙を突いて、芽依は静かに姿を消した。先ほどの一部始終は、戸賀愛瑠が仕掛けた隠しカメラに収められていた。これこそが、不義理な二人を制裁する切り札となるはずだった。*午前九時。婚約式の開始時刻を迎えたその時、招待客全員に突如として通知が届いた。梅原家と朝倉家の婚約式が中止になったという。「どういうことだ?昨夜までは何も......」「聞いたところによると、朝倉さんが浮気を......」立ち去る来賓たちの噂話が飛び交う中、芽依と愛瑠は人々の動揺に乗じて、昨夜の監視カメラが捉えた「素材」の選別を進めていた。芽依は意図的にぼかした数枚の写真を選び出し、愛瑠に指示を出した。「まずはこれを流して」「えっ、これだけ?」愛瑠は目を丸くした。「なんで決定的な動画を出さないの?あの不倫カップルを完全に潰せるのに!これじゃ画質も悪いし、絶対に否定してくるわよ!」「まだその時じゃないの」
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