「ろくでもない、ですか?」その時、扉が開き、一人の男性が姿を現した。その後ろには、なんと本当に牧谷諒の姿があった。取締役会のメンバー全員が驚愕して立ち上がり、畏怖の表情を浮かべながら諒を見つめた。彼らにとって牧谷諒は単なる人気俳優ではない。牧谷グループの次男なのだ。まさか芽依が本当に彼を招くことができるとは、誰一人として想像だにしていなかった。「牧谷様、誤解なさらないでください。あなたのことを申し上げたわけではございません」東彦は慌てて笑みを浮かべ、謝罪の言葉を述べた。奏音も急いで化粧直しをし、挨拶の機会を伺っていた。しかし諒は誰にも目もくれず、芽依の方だけを振り返って言った。「君の企画案、悪くない。契約しよう」「ありがとうございます!」芽依の眉尻が喜びに上がった。諒は意図的に鼻に皺を寄せ、東彦を軽蔑的に一瞥しながら続けた。「ただし、この部屋は空気が悪すぎる。場所を変えようか」芽依は愛らしく微笑み、手を差し出して言った。「では隣の会議室へご案内させていただきます。詳細を詰めた上で、契約を締結いたしましょう」二人が部屋を出ようとした時、東彦は最後の抵抗を試みた。「芽依!牧谷様がどういうお立場か分かっているのか?超一流タレントの契約料だぞ。君にその支払い能力があるとでも?」東彦は何度も目配せをし、側近も同調するように声を上げた。「その通りです。お嬢様、牧谷様は軽々しく怒らせていい方ではありません。もし何か問題が起これば、梅原グループが責任を負うことになるのですよ」芽依は平然と諒の方を向き、「牧谷様がこれほど私の企画をお気に入りくださったのですから、出演料は友好価格という形で......私に決めさせていただけませんか?」と提案した。「もちろん」諒は愛らしい笑みを浮かべながら即座に頷いた。二人の後ろ姿を見送りながら、東彦は唖然としていた。まるで芽依に操られているかのような牧谷諒の態度。こんなに素直に言いなりになるなんて......「あの娘が、どうして牧谷家の人間と知り合いなんだ?」東彦は眉間に深いしわを寄せ、首を捻った。奏音も実は不思議に思っていた。東彦の耳元に近づき、「芽依にそんな力があるわけないです。最近、謙人さんが私と牧谷様の共演を進めていて、そのつながりがあったんでしょう」と囁いた。「なる
Read more