リカルドは今、応接間の扉の前に立っていた。「まさか……本当に、この中で私を待っているのだろうか……?」ゴクリと息を呑み、リカルドは扉をノックした。――コンコン「……」少しの間、待ってみるが何も反応は無い。「やはり、いないのだろうか?」念の為にもう一度、今度は声をかけながらノックすることにした。――コンコン「失礼いたします」けれど、やはり反応は無い。「何だ、やはりもう帰っているのか」胸をなでおろしながら、リカルドは扉を開け……目を見開いた。「え!?」太陽が差し込む部屋の中に、ソファに座ったまま居眠りをしているイレーネの姿がリカルドの目に飛び込んできた。「こ、この方は……一体……?」リカルドは驚きながら、応接間の中に入った。居眠りをしているイレーネのブロンドの髪が太陽の光に照らされてキラキラと輝いている。その姿はまるで天使のように見えた。(まさか、本物の天使では無いよな……?)そこで恐る恐るイレーネに声をかけた。「あの……御令嬢?」それでもイレーネは目を覚まさない。「すみません、御令嬢」困ったリカルドは再度、イレーネに声をかける。すると――「ん……」長い睫毛を震わせ、イレーネがゆっくり目を開けた。目を覚ましたばかりの彼女は半分寝ぼけている。突然目の前に現れたリカルドに驚くこともなく、挨拶をした。「……あら……どうも、こんにちは……」「ええ、こんにちは。私をお待ちだったとフットマンから聞いたのですが……それは本当のことでしょうか?」そしてリカルドは笑みを浮かべる。「えっと……?」そこでイレーネはようやく頭がはっきりし、慌てて立ち上がると謝罪の言葉を口にした。「あ……! このお部屋の居心地があまりに良かったものですから、うたた寝をしてしまいました。大変申し訳ございません!」「いえ、それは私がお待たせしてしまったからですよね? それで……どのくらい、お待たせしてしまったでしょうか……?」リカルドは恐る恐る尋ねた。「そうですね……? 5時間程でしょうか……?」「ええ!! 5、5時間ですか!! そ、そんなにお待たせしてしまったのですか!?」あまりのことに、リカルドは身体がのけぞるほどに驚く。けれど、イレーネは気にもとめずに話しかけた。「あの、もしや……あなたがリカルド・エイデン様でしょうか?」「え、
最終更新日 : 2025-01-24 続きを読む