All Chapters of 妻子と娘の命日に、クソ旦那が不倫相手の子供のために誕生会を開く: Chapter 11 - Chapter 20

知美は大輔に後ろへ引っ張られ、意識が朦朧としかけた時、拳を強く握り、指先を手のひらに食い込ませた。その痛みで意識を取り戻した。自分で自分を救わなければ！知美はドアハンドルを掴んで体を支え、自力救済の手段を目で探した。センターコンソールの上のクリスタルの置物が、そのチャンスを与えてくれた。しかし手を伸ばしても、いつも少し届かない。彼女は歯を食いしばり、大輔の力に抵抗しながら、指先を少しずつ伸ばしてクリスタルに手を伸ばした。滑り止めマットからそれを掴み取った瞬間、思い切り後ろへ叩きつけた。ドンという音と共に大輔が呻き声を上げ、知美から手を放した。知美はすぐさまドアロックを解除し、転がるようにして車から這い出した。秋の夜、月が明るく照らす中、鋭い風が知美の体を容赦なく切り裂くように吹きつけていた。彼女は必死に前へ走った。数歩進んだところで、後ろから首を掴まれ、必死に抵抗しようとしたが、髪を掴まれてドアに叩きつけられた。めまいがして倒れかけると、大輔は彼女を後部座席に押し込んだ。大輔はドアの前に立ち、息を整えながら、額の血を雑に拭った。目には先ほどまでの優しさや思いやりの欠片もなかった。彼は歯ぎしりしながら言った。「可愛いからって、調子に乗ってんじゃない！メシ食って映画見て、次はヤるに決まってんだろう。今さら帰るだと？舐めてんのか？」知美は諦めたくなかった。必死にもがきながら、蹴り続けて、大輔が近づくのを阻止しようとした。しかし大輔は逆に彼女の足首を掴み、ハイヒールを脱がせた後、足の甲から上へとゆっくりと撫で上げた。知美は肌に蛇が這うような感覚を覚え、全身が震えた。足をばたつかせて引き戻そうとしたが、かえって大輔に両足を開かれる隙を与えてしまった。大輔は得意げな笑みを浮かべながら知美の両足の間に入り込み、体を押しつけると、スカートの裾から肌を這うように触った。彼は知美の体を嗅ぎ、陶酔するように深く息を吸い込んだ。本当に良い香りだ。本当に柔らかい。知美はとても美しい。風情がありつつも、決してわざとらしくない。肌はしっとりと潤い、動揺しているため、白く滑らかな肌が内側から外側へとほんのり赤く染まっている。まるで軽く酔っているような状態だ。涙で潤んだ瞳と相まって、儚くありながらも魅

宮本会長は元々怒っていたが、息子の無能さを見て、さらに怒りが増した。彼は手を上げ、まるで岩雄の頭を突き刺すかのように指を突き付けながら怒鳴った。「こんな役立たずの息子を持つとは！頭が空っぽで、能天気な女に振り回されて！お前に静也の半分でも知恵があれば、こんな事態にはならなかったはずだ！」岩雄の顔色が一層悪くなった。知美はドアノブを握った手を下ろした。今出て行けば、義父の面目を潰すことになる。義父は彼女にずっと優しかった。だからそんなことをするのが忍びない。その時、冷たく沈んだ声が割って入った。厳かで漆黒の姿がゆっくりと近づいてきて、落ち着いた様子だった。端正な顔には波風一つなく、目の奥に冷たさを宿していた。「父さん、加藤は大丈夫です。兄さんを責める意味はありません」「責めるだけで済むと思っているのか？加藤家が説明を求めてきている。こんな汚らわしい事が広まったら、宮本家の面目はどうなる？結局のところ、ろくでもない者を家に入れるべきではなかったんだ。厄介者を連れ込んで、頭の中は男とのもつれ事ばかり！」宮本会長は顔をしかめ、葉子を一瞥した。その意味は明白だった。厄介者とは知美のことだ。葉子は唇を強く噛み締めた。反論したくても、できなかった。静也は冷淡な表情で、落ち着いて言った。「この件は話し合いで解決できます。知美が示談に応じれば済むことです。そうでなければ、徹底的に調査されれば加藤は相当痛い目に遭うでしょう。そうなれば、我々が彼らと取引を持ちかけるのではなく、彼らの方から取引を懇願することになります」この話を聞けば、賢明な人なら加藤が常習犯だと分かるはずだ。調査が進めば、加藤は頭を殴られただけでは済まなくなる。加藤家全体が巻き込まれることになるだろう。加藤家が殴られたことを騒ぎ立てているのは、ただ取引でより多くの利益を得たいだけだ。商売の話なら、話し合いで解決できる。宮本会長は満足げに静也を見た。「そうだな。お前の言う通りにしろ」岩雄は拳を握りしめて反論した。「だめだ！知美はあんな畜生に......示談だって？それは知美が加藤の行為を認めることと同じじゃないか！」宮本会長が怒り出そうとした時、静也が先に口を開いた。「知美は同意するは

早朝の大学正門前は人通りが少なかった。疲れ切った知美は静也に車内に引っ張り込まれた。どんなに抵抗しても、常にその力で引き戻された。顔を上げると、静也が彼女をからかうように弄んでいるのに気づいた。まるで彼女の抵抗が彼の興味を引くための手段にすぎないかのように。彼女は本当に疲れ果て、ついに腕の力を抜いた。静也は彼女を引き寄せると、顔を上げさせ、ぶつけて赤くなった額を撫でた。「まだ懲りていないようだな。なぜ退院した？」彼は何気なく言ったが、まるで病室の外で彼女に示談を勧めた人物が自分ではないかのようだった。知美は彼を見つめ、二度の人生を経ても彼を理解できないように感じた。彼女が黙っているのを見て、静也は少し力を入れて彼女の顎を掴んだ。彼女は静也の操り人形のようだった。思いのままに扱われる存在だ。知美は屈辱を感じ、歯を食いしばって彼の手を強く払いのけた。パンという音が車内に響き渡った。車内が一瞬静まり返った。静也の白い手の甲に四本の指の跡が残った。知美は一瞬動揺したが、すぐに顔を背けた。「叔父様、ご心配ありがとうございます。お忙しいところ、もう失礼します」そう言って、ドアを開けようとした。しかし、カチッという音と共に、ドアがロックされた。外にいた田中は、ドアのロックする音を聞いたのか、気を利かして背を向けた。密閉された空間に、知美は大輔に押さえつけられた時の感覚を、猛然と思い出して震えた。静也は姿勢を正し、ゆっくりとタバコに火をつけた。すぐに車内は白い煙で満たされ、彼の表情が見えなくなった。しかし、知美は彼の嘲笑うような声を聞いた。「薬を盛って俺のベッドに潜り込んでおいて、今さら知らないふりか？」「私じゃありません！」知美は反論したが、その口調には諦めが滲んでいた。「証拠は？」「......」彼女には証拠なんて何もなかった。何が起こったのか全く分からず、なぜ静也の部屋にいたのかも分からなかった。そして......最後には、自分から望んでしまった。彼女の愛情と思いやりが、全て彼女を指し示す矛先に変わってしまった。静也はタバコの煙を吐き出し、陰鬱な目で彼女の顔を向かせながら、苛立たしげに言った。「俺と一緒に帰るぞ」知美は首を強張らせ、一言一言をはっ

彼女はただ自分の血がながれるのを見つめるしかなく、向かいでは静也が秋子を後ろに庇っていた。秋子は静也の背後で笑みを浮かべていた。その光景を見た知美は、顔が蒼白になり、苦笑いを漏らした......そこへ警官が駆け込んできた。「通報は誰からです？」「俺だ」静也は冷淡に知美を指差して言った。「彼女を、連行しろ」警官は知美の傷を見て驚いた。「出血が酷いです。まず手当てを」静也は一瞥もせずに冷たく言った。「連行しろと言った。自分のしたことは自分で責任を取れ」その言葉と共に、知美は手錠をかけられた。警官は彼女を心配し、手元にある包帯で傷口を押さえて止血した。軽く押さえられただけで、知美は冷や汗を流した。連行される時、知美は一瞬立ち止まり、さりげなく言った。「私ではありません」静也が彼女を見上げた時、秋子が気を失った。当然、彼は知美の言葉など気にかけず、慎重に秋子を抱き上げた。知美は周りを見渡し、秋子のマンションのあちこちに静也の痕跡があることに気づいた。視線を戻すと、ちょうど静也の冷酷な目と合った。彼は彼女が許しを乞うのを待っているかのようだった。彼はいつもこうだった。高みから見下ろし、人の運命を弄ぶように。彼は知美に告げていた。彼が許さない限り、逃れられないと。知美は口の中に広がる血の味を、歯を食いしばって飲み込み、振り返ることなく歩き出した。静也の目が一瞬止まり、知美のひ弱な後ろ姿を見つめた。儚く、美しかった。まるで次の瞬間、日光の中で煙のように消えてしまいそうで、掴もうとしても掴めないかのようだった。かつて彼を見ては密かに微笑んでいたあの女性は、もういないようだった。彼は傍らに立つ田中を見た。田中は小さく頷いて、静かに立ち去った。......知美は以前自分を慰めてくれた女性警官に再会した。女性警官は知美の様子を見て、ため息をつきながら言った。「また会いましたね、宮本さん。パトカーに救急箱がありますから、とりあえず簡単な処置をさせてください。傷が悪化しないように」温かみを感じ、知美の目に光が戻った。「ありがとうございます」女性警官は丁寧に処置を施し、出血は止まった。その後、彼らは近くの病院に知美を連れて行った。診察した医師は

「加藤と園田さんが違うのではなく、私と彼女が違うんです。彼女は清らかで高潔で、叔父様の女。私は何者でもない。だから園田さんと争ってはいけない、抵抗してはいけない、弁解してもいけない。ただ頭を下げて運命を受け入れ、両手を差し出して、全ての罪を認めるべき......そういうことですよね？叔父様、でも私がそうした後の結果を考えたことがありますか？あなたたちは私を許してくれるんですか？じゃあ私はどうすればいい？死ねばいいんですか？」知美は一言一言が胸を刺すように言い、そして自ら笑った。彼女は静也に向かって怪我した手を掲げ、揺らしながら言った。「あと数ミリで神経が切れるところでした。叔父様、残念でしょう？私の手が使えなくなれば、園田さんが学校で唯一のコンテスト代表になれます。そうすれば、ネットの声も私への中傷は私の自業自得になります。会長も私を追い出す口実を得ます。そして、叔父様の秋子は相変わらず、高貴な女神のままでいられます。あなたたちは私の言葉も行動も気にしません。ただ自分たちの望む結果だけを求めています。なぜわざわざ偽善的に罰なんて言うんですか？加藤が密かに傷つけた人は少なくないはずです。彼は罰を受けなくていいんですか？なのに私に示談を強いました。私は何もしていないのに、罰を受けろと？なぜですか？どうして！園田さんが傷ついたからですよ！」知美は血走った目で静也を見つめた。静也は動かず、何も言わず、まるで無関係な人のように冷たかった。突然、知美は疲れ果てたように感じた。「お帰りください。園田さんのことを大切にしてあげてください。私たちはもともと何の関係もないのですから」静也の黒い瞳が下がると、表情は明暗が入り混じり、捉えがたい感情が流れているようだったが、一瞬で再び冷たく危険な様相に戻った。「言い終わったか？頭を下げないのなら、ここでゆっくり反省するがいい」そう言って、彼は冷淡にスーツを整えながら立ち上がった。知美は目の前の大きな影に覆われ、一筋の光も見えなかった。彼女は静也を見上げ、目には既に涙が溢れていた。静也は体を横に向け、喉が動いたが、躊躇なく出て行った。ドアが閉まるのを見て、知美はすぐに顔を上げたが、涙を抑えることはできなかった。結局、どん