知美は落ち着いて少し考えてから、唯一信頼できる女性警官に近寄った。「お願いがあるのですが......」「ええ、分かりました」女性警官は頷いた。全てを伝え終えると、知美はようやく安心した。女性警官に迷惑をかけないよう、深く息を吸って言った。「話すことは全て話しました。あなたに他の人との関係を悪くさせるつもりはありません。私のことは規則通りに処理してください」女性警官は知美に親切にしてくれた。もし彼女のせいで、静也と対立することになれば申し訳ない。そう思って大人しく手錠をかけられた手を上げた。女性警官は躊躇いがちに彼女を見て、くすっと笑った。「実は......」言いかけたが、後の言葉が続かなかった。そして意味深げに言った。「ここにいる方が、むしろ安全だと思いませんか?」「安全......ですか?」知美は理解できなかったが、頷いた。「ありがとうございます」女性警官は何か言いかけたが、結局首を振って何も言わず、手錠を外してから部屋を出て行った。この件は何故かネットに流れた。秋子は取材で涙を浮かべながら、この事件は宮本とは無関係だと強調し続けた。しかし、その表情には我慢と悔しさが満ちており、さらに怪我した腕を偶然見せてしまった。静也との交際発表後、天才ジュエリーデザイナーとしての名声で、彼女はネット上で多くのファンを持っていた。インタビュー動画がアップロードされるや否や、熱心なファンたちが大学に詰めかけ、知美に制裁を加えると誓った。知美はそれを知り、やっと女性警官の言った「安全」の意味を理解した。もし彼女が一人でこれらのファンに捕まれば、その結果は想像もしたくなかった。事態は一晩で収拾がつかないほど発展し、大輔の件までもがネットに流出した。ただし、その中で大輔は被害者として描かれていた。知美は嫉妬から同級生を傷つけ、誘惑しておきながら翻意した悪女として描かれていた。ネットに接続できなくても、警官たちの会話の断片から、ネット上の騒動の激しさは想像できた。知美は弁解もせず、静かに座って待っていた......そこへ、スーツをきちんと着こなした男性が現れた。宮本家の顧問弁護士の渡辺だった。「渡辺先生、こんにちは」知美は礼儀正しく挨拶した。その言葉
Last Updated : 2025-01-02 Read more