「誰が見たんだ?」冬馬は興味深そうに言った。「是非会ってみたいな」冬馬の目に、捉えどころのない殺気が宿った。海外でも神崎市でも、冬馬を恐れない者はまだいない。涼は分かっていた。この時、たとえやよいを呼んだとしても、冬馬の前で奈津美と冬馬が一緒にホテルに行ったと証言する勇気はないだろう。横から、田中秘書が近づいてきて言った。「黒川社長、全て捜索しましたが、滝川さんは見つかりませんでした」「見つかるまで探せ」涼は冷たく言った。「ホテルはこんなものだ。まさか奈津美が飛んで逃げられるはずがない」「はい」田中秘書はすぐに人員を増やし、奈津美を探し始めた。冬馬はこの件には明らかにあまり興味がないようで、「では黒川社長、ゆっくり探してください。俺はこれで」と言った。そう言って、冬馬はカードキーをかざして部屋に入った。その頃、奈津美は周囲の隙をついて帽子を借り、神崎ホテルを出ていた。涼はもう一度奈津美に電話をかけた。奈津美は携帯電話の着信表示を見て、すぐに電話を切った。この時に涼の電話に出たら、本当にやましいことがあると思われてしまう!20分後、奈津美は神崎経済大学に戻った。月子はすでに2限の授業を終え、教室で居眠りをしていたが、奈津美が戻ってくると急に目が覚めた。「奈津美、なんでこんなに早く戻ってきたの?」まだ2限目じゃない!「やよいと涼が一緒にいるってメッセージ送ってきたじゃない。やよいはどこにいるの?」「やよい?知らないわ。彼女は金融専攻じゃなかったっけ?1年生ならこの時間も授業を受けているはずだけど、詳しいことは彼女の時間割を見ないと分からないよね」「探しに行きましょう」「今?でももうすぐ授業が始まるわよ!」「1限くらい大丈夫!」月子は学年トップ10に入り、成績優秀で、クラス委員も務めているため、彼女が授業をサボっても通常誰も気にしない。月子は奈津美の後ろを歩きながら言った。「奈津美、一体どうしたのよ!何を怒っているの?もしかして、あのやよいと涼が何か陰口を言ったんじゃない?あの三浦さんったら、彼女の親戚にはろくな人がいない!」月子がぶつぶつ文句を言っているところに、教科書を抱えて教室に向かうやよいがやってきた。やよいは奈津美の姿を見ると、顔色を変えた。奈津美は冬馬に
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