ビデオの中、幼稚園の映像が流れている。背の高い男が可愛い男の子を正面から抱きしめている。その横には、笑顔を絶やさない女性が二人の腕に次々と風船を挟んでいる。風船挟みゲームだ。まるで家族三人のほのぼのとした一場面のように見える。ただし、その場にいるべき人間は本来、私だったはずだ。画面の反射に映る自分の顔は、青白く、髪は乱れて頬に張り付いている。まるで映画に出てくる悪霊のようだ。目の前の幸せそうな光景とは全く噛み合わない。「この卑劣な不倫女、よく見ておけ」私の骨折した箇所を押さえつける手に力が加わる。「お前には手に入れる資格がない幸せだ。壊そうなんて思うな」冷や汗が大粒となって落ちていく、折れた足の痛みは心の痛みの何万分の一にも及ばない。川瀬が帰国したことは知っていた。その日の早朝、帰宅した西村の身から漂う隠しきれない香水の匂いも嗅いでいた。後日、息子の悠真が偶然、彼女と西村が一緒に街を歩いているところを目撃し、彼女に向かって「出て行け!」と泣き叫びながら掴みかかったこともあった。そして家に戻ると、息子は私に飛びつきながら涙で目を赤くし、こう訴えた。「悠真にはママが一人しかいらない!」それがいつからか、息子は夢の中で心奈おばさんって呼ぶようになった。私が迎えに来るのが遅いと怒り、料理がまずいと文句を言い、寝る前の物語が古臭いと嫌がるようになった。そして、私が彼を抱きしめて寝ることも拒むようになった。以前の私は家政婦を頼むなんて考えたこともなかった。仕事以外の時間をすべて彼ら父子に捧げてきた。でも、どうやらそれではもう足りないらしい。だから私は仕事を辞め、専業主婦になり、彼らの世話に専念することにした。しかし数日前のこと。出前のフライドチキンが健康に良くないからと、息子に食べ過ぎないよう注意した時のことだ。彼は私を指さして言った。「家にこもって楽ばっかりしてるくせに、稼ぎもしないで、全部パパのお金を使ってるくせに、僕に指図するなよ!」その言葉を聞いた瞬間、雷に打たれたような衝撃を受けた。息子が私をそんな風に見ているなんて。「あんたが出て行けば、心奈おばさんがここに来て僕のママになれるのに。彼女は綺麗で優しいし、あんたみたいに僕を虐めたりしない!」彼の
Last Updated : 2024-12-10 Read more