幼馴染みを救うため、夫は私を海で死なせた のすべてのチャプター: チャプター 11 - チャプター 16

石川慎吾は2日間続けて外出せず、電話が鳴っても出なかった。彼は寝室に籠もり、ドアに鍵をかけ、家政婦が掃除に来ても開けなかった。彼は引き出しの中から私の日記を見つけた。中学生の頃から日記をつける習慣があって、そこには慎吾への片思いが記されていた。私は彼に自分の愚かな過去を見られたくなかった。止めようとしても、彼が開くのを見ているしかできなかった。私が慎吾を好きになったのは、人を救ったような感動的な物語があったわけではない。ただ彼がイケメンで成績が良かったからだ。思春期の少女は自分より優秀な男子に恋をしやすい。私も例外ではなかった。薄暗い灯りの下、十代の私は日記にこう書いていた。【私は石川慎吾が好き。彼はイケメンで成績も良いだけじゃなく、優しい心の持ち主。貧困児童に寄付をしているのを見たわ】【でも私は普通の家庭の出身で、彼は豪門の御曹司。私たちが一緒になる機会なんてないわ】その後、私が清水家の本当の令嬢になった時、日記にはこう書かれていた。【安奈の代わりに石川慎吾との縁談が決まって、心に罪悪感がある。慎吾さんは私のことを好きじゃないみたい。両親に縁談を断りたいと言ったら、父に平手打ちされた。痛かった】【安奈がチンピラのボスに告白するのを見た。彼女は慎吾さんのことが好きじゃないって。慎吾さんも可哀想だわ。だから私が彼と結婚しよう】【安奈が階段から自分で転げ落ちたのに、慎吾さんは私が押したと思っている。彼は私をもっと嫌いになった】【慎吾さんが足を怪我した。しっかり看病しなきゃ。彼は好き嫌いが激しいから、料理教室に通って、彼を健康的に太らせてあげよう】【安奈が帰国した。彼女は私を誘い出し、慎吾さんから身を引くよう言ってきた。断ったわ。だって彼女は慎吾さんのことを愛してないって言ったから】【安奈が電話で泣いていた。彼女の一言で慎吾さんは彼女の元へ走っていく。私は本当に身を引くべきなのかしら。三角関係は息苦しい】日記の最後の記録は：【妊娠した。慎吾さんはこの子を喜んでくれるかしら？】私は静かに隣に座り、慎吾の手が日記の最後のページに留まるのを見ていた。充血した目から涙が流れ、紙の上に落ちた。そして彼は手を挙げ、自分の端正な顔を激しく平手打ちし始めた。「樹奈、俺はクズだ。安奈を愛していると思

私の遺体は解剖され、警察も私の死因の真相を積極的に調査していた。誘拐は安奈が一手に企てたものだった。安奈が慎吾に助けを求めた時、強く警察に通報しないよう懇願した。慎吾は本当に警察に通報せず、おとなしく身代金を持って彼女を救いに行った。これが誘拐犯に逃走の時間を与えることになった。さらに、多くの証拠が安奈によって破壊されたため、真相の解明は困難を極めた。石川慎吾、あなたの全ての決断が私をより深い苦しみの淵に追いやったのよ。鑑定報告書が出たので、私の遺体を保管する必要はなくなった。両親と兄は相談の末、私を火葬することに決めた。慎吾には連絡さえしなかった。しかし、慎吾はそれでも情報を得た。彼は清潔な服に着替え、髭も剃り直した。彼は霊安室の前に立ち、私の遺体を見つめた。彼は言った。「樹奈、俺は本当に君のことが好きだった。ずっと安奈を愛していると思っていたけど、君を失って初めて気づいた。もう随分前から君を愛していたんだ。君こそが俺にとって一番大切な人だった」私は慎吾の隣に立ち、彼の告白を聞いて、少し吐き気を覚えた。遅すぎた愛情なんて、もう欲しくない。「自分の本当の気持ちが分からなかった。君に心惹かれたこともあったけど、それが安奈への気持ちを汚すことを恐れていた」彼は続けた。「だから君に心惹かれるたびに、つい冷たくしてしまった」「全て俺が安奈への執着を愛情と勘違いして、君を傷つけることばかりしてしまった」「もし人生をやり直せるなら、絶対に一途に君だけを愛する」死んでからも慎吾のこんな吐き気がする言葉を聞かされるなんて。私は少しイライラした。「石川慎吾、もし本当に来世があるなら、お前は遠くに行け。樹奈の輪廻の道を汚すな」兄は本当に私の代弁者だわ。「樹奈は今世では恋愛脳だったけど、次の人生ではきっと目を見開いて人を見極められるはずだ」慎吾の顔は一気に暗くなり、目は真っ赤になったが、どうすることもできなかった。今日は私の告別式だった。両親は私への感情が薄く、他の人にも知らせていなかった。義理の両親以外に、安奈も来ていた。義理の両親は安奈が好きではなく、安奈が挨拶しても無視した。安奈は悲しそうな目で慎吾を見た。しかし慎吾は彼女を見ても、一瞥さえくれなかった。安奈は

「なぜって？もちろん、あんたたちを憎んでいるからよ。復讐したかったの」安奈は目を真っ赤に腫らした両親を見た。「あなたたちが私を嫁がせた男は、海外での数年間、毎日私に暴力を振るったわ。私を人間扱いせず、客をもてなすよう強制して、最後には私から子供を産む能力まで奪った」「私の人生の悲劇は全てあなたたちが引き起こしたのよ。だから、あなたたちの実の娘を殺そうと思った。私が幸せになれないなら、彼女だって幸せになんかさせない」その狂乱した様子は本当に狂気じみていた。私は首を振った。両親はそれほど悲しんでいないようだった。両親の心の中では、安奈こそが彼らの娘なのだから。兄は怒りで拳を握りしめ、安奈を指さして大声で言った。「お前が両親の実の娘じゃないと分かっても、清水家はお前を粗末に扱ったことなんてない」「結婚はお前が望んだことだ。婚約前に、俺たちはあの男の性格が良くないと言っただろう」「お前が身分の低い男との結婚を受け入れられないと言ったんだ。石川慎吾より劣る男とは結婚できないって」この世で唯一、私が生きている時に優しくしてくれ、死んでからも本当に悲しんでくれたのは兄だけだった。安奈は相変わらず悔い改める様子はなかった。警察は淡々と職務を遂行し、彼女を連行した。私の遺体は火葬された。安奈は私を誘拐した罪で20年の刑を言い渡された。しかし、彼女は有名人で、殺人請負という悪質な犯罪を犯したため、世論の要求により最終的には死刑判決を受けた。でも、なぜか私はまだ転生できずにいた。ただ慎吾の側にいるしかなかった。私は彼が日に日に落ち込み、精神状態が悪化して仕事ができなくなるのを目の当たりにした。彼が必死に切れたブレスレットを修理しようとするのを見た。でも、ブレスレットはまるで意思があるかのように、どうしても繋がらなかった。慎吾はブレスレットを握りしめ、心を引き裂くように泣いた。「樹奈、許してくれ。本当に愛しているんだ」私は彼を見つめたが、心に何の波風も立たなかった。彼が落ちぶれようが、元気になろうが、もう関心がなかった。私はただ、いつになったらこの世界から消えられるのかだけを気にしていた。慎吾の精神状態はますます悪化した。彼は外出せず、家政婦も家に入れなくなった。空気に向かって絶え間