優奈は眉をひそめ、「相手に『フォーリンラブ』が非売品だと伝えなかったの?」と聞いた。そのドレスは彩花の誕生日プレゼントとしてデザインしたもので、最近忙しくて取りに行けなかったのだ。「伝えましたが、相手は鈴木家のお嬢様、莉子様で、どうしても買いたいと言い張って、10倍の価格でも構わないと言っています。鈴木家を怒らせるわけにはいかないので、どうしたらいいか決めかねています」優奈は数秒間沈黙し、淡々と答えた。「彼女に、『フォーリンラブ』以外、店内にあるどの服でも選んで直接プレゼントできると伝えて」「分かりました。そうします」電話を切ると、小泉は申し訳なさそうな顔で比奈と莉子のところへ歩み寄り、「お嬢さん、申し訳ありませんが、当店の社長が『フォーリンラブ』の販売に同意しません。お詫びとして、店内の他のどのドレスでも、莉子様が気に入ったものを無料で差し上げます」莉子は一瞬ドキっとした。JMのドレスはデザインが新しく、平均価格が2千万円以上で、『フォーリンラブ』を見るまでは他にもいくつか気に入ったドレスがあった。彼女はさっきまで気に入ったドレスに目を走らせた。綺麗は綺麗だけど、『フォーリンラブ』と比べると、他のドレスはどうしても見劣りするように感じた。『フォーリンラブ』を見ただけで、自分がそのドレスを着てパーティーに現れる姿を想像すると、どれほど輝くかがわかるのだった。莉子は少し黙って、少し不満げな表情で小泉を見つめた。「せっかく店員が出したドレスなんだから、客が気に入ったら売ればいいじゃない。 そうでなければ、今後ドレスを気に入った人がいても、あなたたちが飛び出して売り物じゃないと言ったら、誰が服を買いに来るんですか?「JMのドレスが素敵なのは認めますが、横島には他にも選択肢があるわ!」莉子の圧力を感じ取り、小泉は笑顔を保ちながらも内心は不快感を覚えた。「莉子様、このドレスは本当に非売品です。どうぞ他のドレスを見てください」莉子は冷笑し、怒りを込めた目で言った。「どうしてもこのドレスが欲しいと言ったら?!」小泉の笑顔も次第に薄れ、「莉子様が何と言おうと、このドレスは売れません。私も用事がありますので、莉子様はゆっくり選んでください。どのドレスに決まったら店員に言ってください。それでは失礼します」そう言って、小泉は振り
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