夕暮れ時、柔らかな陽光が別荘の窓から差し込み、部屋の中に温かな金色の光を映し出していた。 室内は静寂に包まれ、空気にはほのかに花の香りが漂っている。まるで時間が、この瞬間で止まったかのようだった。 微かな風がカーテンを揺らし、そっと囁くように流れていく。 高峯は、光莉の背後に寄り添い、指先で彼女の肩をそっとなぞった。 そして、抑えきれない衝動のまま、軽く唇を落とした。 光莉は疲れ切った目を開けた。その瞳には、ただひたすらな嫌悪と苛立ちが滲んでいる。 彼女はわずかに体を動かし、彼の唇を避けようとした。だが、力が入らず、まるで自分の体が鉛のように重く感じた。 ―もう何時間、ここに閉じ込められているのだろうか。 二十年以上前、彼らはかつて最も親密な関係にあった。 だが今や、すべては変わり果てた。 光莉の中に残っているのは、ただの憎しみと嫌悪、そして軽蔑だけだった。 高峯は満足そうに、彼女を強く抱きしめたまま、そばに横たわる。 「光莉......もうすぐ三十年になるな。こうして、ようやくまたお前を手に入れた。俺たちはもう若くはないが、それでも、お前に触れれば、あの頃の気持ちは変わらない」 彼はずっと健康管理に気を遣い、日々鍛錬を怠らなかった。 体の管理には人一倍厳しく、すでに五十歳近い年齢にもかかわらず、三十代の男ですら敵わないほどの体力を持っていた。 見た目も四十代前半にしか見えず、成熟した魅力と落ち着きが滲み出ている。 若者にはない、時間に磨かれた男の色気があった。 そんな彼の自信に満ちた声を聞きながら、光莉はわずかに唇を上げ、冷たく嘲笑を浮かべた。 その目には、軽蔑の色がはっきりと浮かんでいる。 「あんたが言うその感じが何を指してるのか分からないけど......」 彼女は皮肉げに言う。 「もし気持ち悪いという意味なら、大正解ね。ええ、とっても気持ち悪いわ」 高峯の笑みが、わずかに引きつる。 一瞬で、彼の表情は冷ややかに変わった。 「......気持ち悪い?」 彼は低く問いかける。 「それが、今のお前の俺に対する気持ちなのか?」 「違うわ」 光莉は、静かに、そしてはっきりと言った。 「今じゃなくて、二十年以上前からよ」 彼女は冷たく微笑みながら、続ける
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