紗希は健人兄がLINEで自分の名前を検索しているのを見て、恥ずかしそうに言った。「LINEでは私を見つけられないと思う」「えっ、そんなはずないだろう。会話を固定表示にしたはずなのに」健人は確かに会話を固定表示にしたことを覚えていた。どうして見つからないのだろう。紗希は咳払いをして言った。「ブラックリストに入っているから」「誰がお前をブラックリストに入れたんだ?」健人は本当にブラックリストで妹を見つけると、振り向いて怒鳴った。「お前がやったのか?誰が勝手に俺の携帯をいじって紗希をブラックリストに入れろって言った?」その女は泣きながら言った。「前に私との会話を固定表示にしてくれなかったのに、今は他の女の子の会話を固定表示にするなんて。私が健人の恋人なのに!」「お前が紗希と比べられると思ってるのか?そんな資格があるのか?」健人は更に厳しい言葉を言おうとした時、紗希がまだそばにいることに気付き、すぐに表情を和らげて彼女の方を向いた。「紗希、これは誤解だよ。俺がブラックリストに入れたわけじゃない。怒らないでくれ」「健人兄さん、怒っていないよ」紗希はソファで泣いている女性を見て、複雑な気持ちになった。健人兄の別れ際の言葉を聞いて、まさに浮気者だと思った。その時、制服を着た人が立ち上がって言った。「はい、家族の方がここにサインをすれば終わりです。個人的な問題は自分たちで解決してください」紗希は書類にサインをして、彼らに言った。「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」スイートルームはすぐに静かになり、その女性の泣き声だけが聞こえていた。健人はイライラしながら、振り向いて言った。「紗希、行こう」「このまま行っちゃうの?」「ああ、彼女のことは気にしないで。服を着替えるから待ってて」健人が隣の寝室に入ると、紗希は外で気まずそうに立ち、ソファに座っている女性を見て声をかけかけた。「あの......」しかし、言葉が終わらないうちに、その女性は紗希を睨みつけて寝室に駆け込んでしまった。紗希は外で言いよどんで立ち尽くすしかなかった。健人兄が寝室で着替え中なので、入るわけにはいかなかった。すぐに健人の声が聞こえてきた。「何しに入ってきたんだ?狂ったのか?なんで服を脱ぐんだ?」健人は妹の目に余る光景を見せたくなかった。
Last Updated : 2024-11-22 Read more