江口奈々はあの日、宮崎瑛介の携帯電話からあのメッセージを削除して以来、心がずっと落ち着かないでいた。霧島弥生がわざわざメッセージで宮崎瑛介に伝えたのは、おそらく直接この妊娠を言い出す勇気がなかったからだろうと、彼女は推測していた。だが、それでも二人に何か起こるんじゃないかと心配だったため、その日のうちに宮崎瑛介を誘い出そうとした。しかし、宮崎瑛介はその晩、残業で出かけられないと言った。とはいえ、江口奈々は心配で、彼と一緒に会社で残業し、仕事が終わると彼を引き連れて友人たちとの集まりに行った。宮崎瑛介はそこで飲み過ぎて意識を失ってしまった。その間、彼女は霧島弥生に電話をかけたが、彼女はその電話の声が宮崎瑛介ではなく江口奈々だったことに不機嫌そうに電話を切った。この反応に江口奈々は内心ほくそ笑んだ。霧島弥生の態度は、彼女がすでに宮崎瑛介対して失望し始めていることを示していた。江口奈々は、宮崎瑛介が彼女に中絶を指示したことをほのめかし、補償を申し出れば、霧島弥生は諦めるだろうと考えていた。しかし、江口奈々は直接話をすることを避けた。将来的に宮崎瑛介がその事実を知ったとき、その罪が自分に問われるのを避けるためだ。そこで、江口奈々は友人たちにそれとなく話を振り、彼女たちが代わりに話を進めるようにした。友人たちはこの提案を受け入れた。しかし、予想外にも霧島弥生は現れなかった。江口奈々は内心で焦り始めた。霧島弥生は本気でこの子供を盾に宮崎瑛介を脅そうとしているのか?江口奈々はこの子供が宮崎瑛介の自分への気持ちを変えるとは思っていなかったが、念のため、早めに手を打つ必要があると感じた。そう考えた江口奈々は口を開いた。「彼女が来ないなら、こちらから会いに行くこともできるわ」「会いに行く?彼女がこんなことをしたのに、なぜこちらから会いに行かなきゃならないの?」「そうよ。こんな恥知らずな女に、こっちから出向く必要なんてないわ」江口奈々は困惑したように笑みを浮かべた。「でも、問題を解決しないといけない」友人たちは江口奈々の笑顔が不自然なことに気づき、渋々同意した。「まあ、いいわ。じゃあ、彼女のところに行きましょう」-霧島弥生は家に戻ると、自分の部屋にこもった。宮崎瑛介は仕事に出かけていたので、家には彼女しかいなかった。しば
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