話しかけてきたのは、松山昌平と幼い頃からの親友である司健治だった。 彼は松山昌平の隣に立つ篠田初を見つけると、さらに大げさな声で叫んだ。「なんてこった!みんな見てくれよ、昌平兄が来たばかりか、あの端正でおしとやかな奥さんまで連れてきたぞ。これは......世界の十番目の不思議だな。今日は本当に驚かされたよ!」 松山昌平は冷静な表情を崩さず、優雅に長い脚を踏み出して室内へと入っていった。意味深な言葉を残した。「招待されたからには、当然来るだろう」 篠田初は状況がよく分からないまま、素直で端正な妻のふりをして、忠実に松山昌平の後ろについていった。 何しろ、報酬は一分あたり二千万円という高額なのだから、しっかりと役割を演じなければならなかった。 個室の中は、豪華さは言うまでもなく、広々としていて、照明は柔らかく曖昧な雰囲気を醸し出していた。まるで王宮に来たかのような錯覚を覚えるほどだった。 ソファには、五、六人の男女が座っていた。彼らの服装や振る舞いから、それぞれが名門の出身であることが伺えた。 その中で、最も貴族的な雰囲気を漂わせていたのは、中央に座っていた一組の男女だった。 男性は端正な顔立ちをしており、高く通った鼻筋にはフレームレスの眼鏡がかかっており、知的で洗練された印象を与えていた。しかし、その狭く深い瞳は、すべてを掌握しているかのような余裕を感じさせた。 この余裕は、豊かな家柄と確固たる財力によるものに違いなかった。 例えば、彼が腕につけていた銀色の腕時計は、ロウ社の限定版で、世界に一つしかないものだった。その価値は一億四千万円だった。 彼の隣に座り、親しげに寄り添っていた女性もまた、抜群の気品を持ち、その完璧な顔立ちは単なる美しさだけでなく、大人びた知性が漂っていた。これは一般的な名門の令嬢には珍しい資質だった。 二人が並んで座っている様子は、一目見ただけで非常にお似合いのカップルであることがわかった。 二人は松山昌平が入ってくるのを見ると、驚いた表情を浮かべた。 「昌平、あなた......」 女性はすぐに立ち上がり、その大きな瞳には情感が溢れ、まるで言いたいことがたくさんあるかのように見えた。 それに比べ、男性はやや落ち着いており、穏やかな声で言った。「ようやく怒りも収まったか、来てくれて嬉し
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