相川沙織と渡辺艶の姿は、もう見えなくなっていた。しかし、現場の空気は、依然としてピリピリとしていた。森岡翔側には、4人の仲間がいた。一方、高坂俊朗側には、5人の仲間がいた。その中には、大学のバスケ部のレギュラーセンターもいた。身長は190センチを超え、体重は120キロ以上はあっただろう。ひと目見ただけで、森岡翔側が不利であることは明らかだった。周りの野次馬たちは、二人を煽り立てていた。やはり、他人の喧嘩は蜜の味だ。しかし、大学での集団暴行は、江大が絶対に許さない行為だ。そのため、森岡翔以外の者たちは、そんなリスクを冒すことはできない。たとえ高坂俊朗のような金持ちの息子であっても、それは同じだ。もし退学処分になったら、父親は経済的な支援を断つだけでなく、彼の足を折るかもしれない。二人の間には、緊迫した空気が流れていた。その時、誰かが3対3のバスケの試合を提案した。バスケットボールのコートで争いを解決するには、これが一番の方法だろう。高坂俊朗は、すぐにそれに同意した。彼にとっても、好都合な提案だった。森岡翔側で、まともにバスケができるのは、村上祐介だけだ。彼は大学のバスケットボール部の補欠メンバーだが、他の二人は、ただの素人だ。森岡翔に至っては、論外だ。一方、自分の側には、大学のバスケ部のレギュラーセンターがいる。レギュラーと補欠では、レベルが全く違う。それに、彼自身の実力も、村上祐介に引けを取らない。これはもう、勝ちが確定したようなものだ。「森岡翔、どうする?勝負するか?男なら、逃げんなよ!もし怖かったら、こっちは3人でいい。お前らは4人で来てもいいぞ」高坂俊朗は、森岡翔を挑発するように言った。「翔、乗るなよ!奴は、お前を挑発してるんだ!ゴリがいる限り、俺たちは勝ち目がないぞ!」村上祐介は、森岡翔の耳元でこっそりと言った。村上祐介も、負けず嫌いな性格だったが、レギュラーセンターのゴリ、佐々木陽介には、勝てないことを知っていた。二人ともバスケ部のメンバーなので、よく一緒に練習していた。そのため、村上祐介は、佐々木陽介の実力を、よく知っていたのだ。3対3なら、彼は無敵だ。フルコートなら、まだ勝てる見込みもあるかもしれない。体が大きい分、スタミナが持たないだろう。村上祐介が森岡翔に、試合を止めるよう
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